金沢仏壇は、石川県金沢市で生産される仏壇です。金沢仏壇の特徴や歴史について紹介します。
金沢仏壇の歴史
金沢で仏壇製造業が発展した理由としては、次の2点が挙げられます。
- 15世紀に来訪した蓮如上人が北陸一円に浄土真宗の教えを広めたこと
- 前田利常(加賀藩・二代藩主)、綱紀(四代藩主)により整備、完成された工所によって、優秀な工芸技術家が多く育ったこと
当時の工所の様子蒔絵・漆・紙金工・絵・針・具足・薫物・小刀・象眼・刀鍛治・研物・茜染・大工・御能作物・束帯装束着など、23種に分かれていました。
職人によって作られた製品は、諸侯や寺社への下賜・寄進に使われました。そして、その高度な金箔・蒔絵技術は、一般庶民用の仏壇へと受け継がれていったのです。
金沢仏壇の特徴
金沢仏壇の主な特徴は下記の通りです。
- 加賀藩の細工所の蒔絵、彫刻の技術が生かされていること
- ふんだんに金箔が使われていること
- 軸開きであること
- 長押がうねり長押であること
- 彫刻類に黒檀の丸彫りを使っていること
金沢仏壇の蒔絵金沢仏壇には加賀蒔絵(美術工芸品)の技法が継承されています。蒔絵は戸板裏や太柱など、仏壇の至るところに散りばめられています。
「伝統的工芸品」基準をクリア
金沢仏壇は、1976年(昭和51年)に「伝統的工芸品」の指定を受けました。金沢仏壇は、類似品と区別をつけ、その格調を守るために、伝統証紙以外にも独自の証紙を使用しています。
伝統的工芸品とは優れた日本の伝統産業を後世へ継承するための基準。経済産業大臣が指定した条件を満たし、産地検査に合格した製品には伝統マーク入りの伝統証紙が貼られます。
金沢仏壇に定められた基準
- 地の骨組にはアオモリヒバ(クサマキ)、板物にはイチョウなどを用いる。
※この素材は耐久性に優れ、長期間の使用が可能。 - 各部分は、ほぞ組みによって製作する。これによって堅牢な造りとなり、加工作業、加飾作業、修理洗浄がしやすくなる。
- 上戸、障子の取り付けの基点部分は外側に開く型式の回転軸にする。上戸は、すべて帯・輪入りにする。障子は上・中・下腰輪入(上腰輪の省略も可)とする。
- 宮殿の組み物のうち、下屋根は桝を五重組(もしくは四重組)にする。上屋根は二重~三重に組み立てる。組み物は地板の穴に差し込む。
※宮殿自体に高さが出るため、全容が見渡しやすくなる。 - 塗り加工のうち、下地は主に漆を用いた錆下地とする。大半の部分に中塗りを施す。上塗りには天然漆を使用する。
- 見付板、左右の横板、戸板などは呂色仕上げとする。上戸表は紅透塗呂色とする。すべての輪類には錆紐を引く。
- 前柱、段縁、中柱、風呂の戸、引出し、ハ等のすべてに蒔絵を施す。
※金沢仏壇に用いられる蒔絵の技術水準は極めて高いことで知られる。 - 蒔絵は主に磨き蒔絵、高蒔絵とする。この二つは渋く上品な美しさが特徴。変色に強く、拭いても禿げにくいとされる。
- 彫刻を施す部分のうち、障子の上腰、中腰、下腰及び前指はすべて塗り加工と木地彫(箔押しをせず木肌そのままの味を生かす方法)にする。積み重ね方式ではなく、一切の接着剤を使用しない、一枚板の彫りにする。
※上記により、仏壇全体に渋さと上品さを加える。 - 障子金具には枝を施し、外周の輪かく等は面を取る。
※通常は銅合金又は銅板を加工する。高級品の障子金具には銀を使用する。 - 障子の組子には紗(本紗生地に金色糸で刺繍ハを施したものが一般的)を張る。図柄は唐草、または散り蓮華にする。
豆知識金沢は金箔の主要な産地なので、良質な金箔が入手できます。