宗教の多くは、崇拝の対象を形にして拝みます。
代表的な物として、仏教の「仏像」やキリスト教の「聖画」があります。ユダヤ教のように、「偶像を作ってはならない」「偶像を作らない」ということがその宗教の特徴であると主張する場合もあります。神を崇める古代ギリシャでは「神像」が発展していました。神ゼウスやアポロンがその代表です。
仏像の崇拝は禁止されていた?
仏教が誕生した後500年ほどは、仏像が造られていませんでした。
仏教を説いた釈迦は、自らの知恵によって苦悩から超越するという悟りを人々に説きました。偶像を崇拝するように、自分以外のものに身を任せるのをよいとしなかったのです。
しかし、釈迦の死後は、釈迦の遺骨(舎利)を崇拝するという思想が起こりました。舎利を祀る仏塔や卒塔婆が作られ、その周辺には仏教を学ぶための寺院が作られるようになったのです。
その後もインドでは、仏教教団が釈迦の偶像や霊は遺贈を造ることを禁止、もしくは不適正とみなしたり、偉大な釈迦を人間のような姿で現すことはできないと判断するなどの理由によって、仏像は造られませんでした。
仏像が造られるようになったのはいつ?
では、仏像はいつできたのでしょうか?
ガンダーラ地方で出土した「祇園布施」が最も古いとされています。「祇園布施」は、釈迦が仏弟子1人を従えて4人の信者たちを向かい合い、お布施の申し出を受けているものと言われています。
その後、紀元120年~13年ごろに単独の仏像ができたといわれています。単独の仏像は、礼拝供養のための像という説が有力です。
光背とは
光背(こうはい)とは、後光(ごこう)や円光、輪光とも言います。
光背とは、仏陀の体から発する光を象徴化したものです。光背は、光が出ている場所によってそれぞれ名前があり、頭部の光明を頭光 (ずこう) 、身体部の光明を身光,頭光と身光の重なったものを挙身光 (きょしんこう、こしんこう) 、二重光背などと言います。
仏像の種類
仏像は、信仰の対象で、仏教の世界観を伝えるために多くの仏像が造られてきました。正確な数はわからないと言われていますが、その種類は数百・数千とも言われています。
仏像や仏画は信仰心を養うものであったり、祈願するための物と考えられてきましたが、芸術的な観点から鑑賞することも増えています。仏像や仏画を飾ってみることで、心が落ち着き、気持ちが安らぐという方もいらっしゃいます。
仏像の種類は、5つに分類されます。
如来
菩薩
菩薩(ぼさつ)とは、「悟りを求める者」という意味です。菩薩とは、仏陀になることを目指して修行に励んでいる修行者のことです。
観音菩薩(かんのんぼさつ)
正式には、観自在菩薩または観世音菩薩と訳されます。法華経では、現世の人を救う姿が説かれています。また、浄土系の経典では阿弥陀如来を補佐する菩薩で、人々を浄土まで運んでくれるとされています。観音菩薩は、浄土宗の仏壇の脇仏として祀られています。
弥勒菩薩(みろくぼさつ)
お釈迦様の次に如来の暗いにつくと約束された菩薩です。死んだ後、兜卒浄土に生まれ変われるとする信仰です。
文殊菩薩(もんじゅぼさつ)
「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがある通り、千恵の神様で、学業向上や合格祈願で有名な菩薩です。
明王
不動明王
文字通り「動かない守護者」という意味です。
一般的な不動明王の姿は、右目は見開いて天地をにらみ、左目を細めており、左右の牙で唇の上下を噛んでいます。2人の童子を伴っていることが多く、煩悩を滅してくれます。真言宗の仏壇の脇仏として祀られており、修験道の本尊でもあります。
天部
梵天(ぼんてん)
バラモン・ヒンドゥー教の宇宙の創造神です。
梵天は、お釈迦様が出家することを助け、更に悟りを得られた後に人々に説法することを勧めた、天部を代表する神です。
帝釈天(たいしゃくてん)
嵐の神です。仏教においては、梵天と共にお釈迦様の守護をする神です。
毘沙門天(びしゃもんてん)
もともとは悪鬼の長でしたが、財宝や福徳の神に変わりました。七福神の1人でもあり、大きなお腹に袋を持った姿をしています。
その他の仏像
仏像の制作技法
仏像の制作には、材質によって彫刻の技法が異なります。
金銅仏
金銅仏は、奈良の大仏や東大寺の大仏のような巨像も金銅仏です。
金銅仏は、鋳造像です。溶かした青銅を型に流し込んで作ります。金銅仏が流行った飛鳥~天平像はほとんどが蝋型を使用していました。
造り方は、土で型を作り、そこに蝋をかけて彫刻を施すというものです。蝋型を土で焼きしめると蝋だけが溶けて、空洞ができます。空洞に銅を流し込み、冷やした後に外すと彫刻ができます。この製法で、金・銀・鉄仏を造ることができます。
木彫像
1本の木から造るものから、寄せ木でつくるものまであります。日本の仏像の多くは、この木彫像です。
香木や霊木などの貴重な木で造られる像はほとんどが一木です。
寄木造りは大きな像であっても大木を必要としないので、運ぶのも容易で更に分業も可能という利点があるため効率のよい制作方法です。
石像
日本の仏像のほとんどが木彫像であるのと異なり、海外の仏像は石仏がほとんどです。
日本で石仏が多くない理由として、日本には巨岩がなく石造文化が繁栄しなかったことが挙げられます。
乾漆像
乾漆像には「脱乾漆」と「木芯乾漆」の2種類があります。
脱幹漆は、まず土や粘土で形を作り、その上に麻布を貼り付け、漆で塗り固めて造形します。造形しったものを乾燥させて像を割り、中の土を取除いた後、木芯などを入れることによって像がゆがむことを防ぎます。脱乾漆は、軽いのが特徴です。
塑像
粘土で造る像で、白鳳~天平時代に流行しました。
造形の方法は、まず木で心木を作り縄を巻いてから土を2層から3層にわけます。特徴としては、制作費があまりかからないという点です。
お仏壇の飾り方
仏壇に仏像を飾る場合には、各宗派によって決まりに従って飾る必要があります。宗派だけでなく、地方によっても違いがある場合もあり、仏壇の大きさによっても異なります。菩提寺にお訪ねいただくことをお勧めしますが、ここでは、各宗派の標準的な祀り方をご紹介します。
仏像の設置台
天台宗
本尊は、釈迦如来ですが阿弥陀如来を祀ることもあります。また、信仰によっては薬師如来、観世音菩薩、不動明王、毘沙門天などを祀ることも あります。向かって右側に高祖天台大師、左側に伝教大師最澄を掲げます。
真言宗
真言宗は分派が多いため、飾り方もさまざまです。更に、地域による違いもあります。一部を紹介すると、高野山真言宗では、真ん中に本尊の大日如来、右側に弘法大師、左側に不動明王を祀ります。
浄土宗
中央に本尊の阿弥陀如来、右に観世音菩薩、左に勢至菩薩を祀ります。 観音菩薩の隣に、唐の善導大師を祀り、勢至菩薩の隣には宗祖円光大師法然を祀ります。
浄土真宗
中央に本尊の阿弥陀如来、右に「帰命尽十方無碍光如来」の十字名号、左に「南無不可思議光如来」の九字名号を飾ります。原則として、位牌はおきません。
浄土真宗本願寺派、真宗大谷派をはじめ宗派がいくつもあり、それぞれ仏具に多少の違いがあります。
曹洞宗
中央に本尊の釈迦牟尼仏、右に高祖承陽大師道元禅師を、左に太祖常済大師瑩山禅師を配します。曹洞宗は、「一仏両祖」の三尊仏形式として祀ります。