掛け軸とは、もともとは仏画として日本に伝わり、礼拝用に用いられてきました。「掛けて拝する」という意味があります。その後、時代とともに芸術品として和室の床の間などに掛ける、観賞用のものも作られるようになりました。
ここでは礼拝用として仏壇に祀る掛け軸について、その種類や扱い方などを説明していきます。
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- 購入する時の注意点とは
- 価格・サイズ・設置例を詳しく
- 我が家にぴったりのお仏壇とは
- お仏具の役割やお飾りの仕方
- ご安置のポイント
- お仏壇Q&A
- お仏壇選びステップガイド
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礼拝用の仏画
掛け軸という言葉には「掛けて拝する」という意味がこめられており、日本には飛鳥時代に中国から伝わったといわれています。
今日では花鳥画や山水画、浮世絵などさまざまな芸術に発展していますが、その始まりは仏教の仏画として、語源通りに礼拝用として用いられるものです。
ここで説明していく掛け軸は、伝来当時の意味を持つ仏教の礼拝用として、仏壇に祀るためのものです。
仏像と同じ役割
掛け軸は仏像と同じ役割をもっています。
一般的には「本尊」と「両脇侍(脇侍左・右)」の3本をひとつのセットとして安置します。
基本的には3本でひとつですが、本尊を仏像にして両脇侍を掛け軸にするということもあります。
仏像にするか掛け軸にするかは菩提寺からの指示がない限り、特別な決まりはありません。が、本尊と両脇侍の組み合わせは、宗派によって決まりがあります。
わからない場合は菩提寺や仏壇仏具店に確認しましょう。
開眼供養が必要
仏像と同じ役割を担っているので、仏壇に祀る前には「魂入れ」や「お性根入れ」とよばれる開眼供養を行う必要があります。
開眼供養をすることで仏様や仏になった故人、ご先祖様の魂が掛け軸に宿るので、この儀式を行う前の掛け軸はただの「絵」ということです。
宗派による違い
仏像には大きく分けて如来、菩薩、明王、天部の4種類があります。
如来は「真実から来た者」で、最高の地位にいます。菩薩は「悟りを求める者」、明王は如来の命を受けて調伏や救済を行う者、天部は仏敵から人々を守る者です。
本尊と両脇侍の組み合わせは宗派によって違いがあるため、それぞれの宗派に合った本尊と、両脇侍が描かれた脇掛けをそろえます。
天台宗
天台宗の本尊は「釈迦如来(しゃかにょらい)」です。
両脇侍は脇侍左が「伝教大師(でんぎょうだいし)」、右が「天台大師(てんだいだいし)」です。
真言宗
真言宗の本尊は「大日如来(だいにちにょらい)」です。
両脇侍は脇侍左が「不動明王(ふどうみょうおう)」、右が「弘法大師(こうぼうだいし)」です。
浄土宗
浄土宗の本尊は「阿弥陀如来」です。
両脇侍は脇侍左が「法然上人(ほうねんしょうにん)」、右が「善導大師(ぜんどうだいし)」です。
浄土真宗本願派
浄土真宗本願派の本尊は「阿弥陀如来」です。
両脇侍は脇侍左が「蓮如上人(れんにょしょうにん)」、右が「親鸞聖人(しんらんしょうにん)」です。
真宗大谷派
浄土真宗大谷派の本尊は「阿弥陀如来」です。
両脇侍は脇侍左が「九字名号(くじみょうごう)」、右が「十字名号(じゅうじみょうごう)」です。
臨済宗
臨済宗の本尊は「釈迦如来(しゃかにょらい)」です。
両脇侍は各派によって違います。臨済宗十四派といわれるように、それぞれの宗派によって脇掛けも違ってくるので、菩提寺が何派かを確認してそろえます。
脇侍左が「普賢菩薩」、右が「文殊菩薩」、または左が「観世音菩薩」、右が「達磨大師」を安置する場合が多いようです。また各派によっても違いがあるため、菩提寺に確認しましょう。
曹洞宗
曹洞宗の本尊は「釈迦如来」です。
両脇侍は脇侍左が「常済大師(じょうさいだいし)」、右が「承陽大師(しょうようだいし)」です。
常済大師と承陽大師はそれぞれ「瑩山(けいざん)」、「道元(どうげん)」ともよばれています。
日蓮宗
日蓮宗の本尊は「曼荼羅(まんだら)」です。
両脇侍は脇侍左が「大黒天(だいこくてん)」、右が「鬼子母神(きしぼじん)」です。
そのほかの掛け軸
法名軸
法名軸(ほうみょうじく)は主に浄土真宗系の宗派で使用される正式な仏具のひとつで、位牌のかわりに仏壇に掛けられる掛け軸のことです。
死亡年月日と法名が記してあり、礼拝用の掛け軸とは異なるため、礼拝の対象ではありません。
書き方
法名軸を仏壇仏具店で購入または手次寺(他宗派での菩提寺をいう)に用意してもらい、四十九日までに住職に法名を書き写してもらいます。
過去帳がある場合は、このときに併せて記入してもらいます。
法名軸の中でも、罫線を引いて主に先祖代々の法名を記せるようにしたものを合幅(がっぷく)といい、総法名軸として使用されます。
表装
住職に法名を書き写してもらった本紙を、掛け軸に仕立て上げることをいいます。
掛け軸の仕立てに多く見られるのは、金襴(きんらん)や緞子(どんす)といった紋織物で、宗派によって紋の柄に違いがある場合があります。
サイズ
9cm巾・17cm丈の豆代サイズのものから、19.2cm巾・42cm丈の百代サイズまであるので、仏壇の大きさに合わせて選ぶことが可能です。
仏壇が小さくて掛けられない場合に合わせて、法名立てやスタンドもあります。
掛け方
法名軸は仏壇の側面に掛けます。一般的に仏壇に向かって右側に直近に亡くなった方やご両親、左側に総法名軸を掛ける場合が多いようです。
掛け軸の選び方
本尊と脇侍を選ぶ際、仏像がよいか掛け軸がよいか迷う方も多いかと思います。
菩提時からの特別な指示などがない限り、仏像と掛け軸どちらを選ぶかに決まりはなく、例えば両脇侍だけを掛け軸にされる方もいます。
ただ基本的には本尊と両脇侍の3本1組で販売されていることが多いので、すべて掛け軸でそろえることが比較的簡単です。
仏壇の大きさに合わせる
掛け軸の大きさは「代」という単位で表されます。
小さいものだと7.5cm巾・20cm丈の二十代から、大きいものだと30cm巾・97cm丈の三百代までさまざまです。
ご家庭の仏壇に掛けられるサイズのものを選ぶ必要があるので、仏壇を購入する際に一緒に選ぶのもひとつの方法です。
菩提寺の宗派に合わせる
掛け軸はなんでも好きなものを掛ければよいというわけではありません。
「宗派による違い」でも説明しましたが、本尊と両脇侍はそれぞれの宗派で決まりがあるので、購入する際は菩提寺の宗派に合わせたものを選ぶ必要があります。
仏壇仏具店など専門店だと、宗派名を伝えると適切なものを選んでくれるので、不安な場合は相談してみるとよいかもしれません。
絹本かプリントか
生糸で平織の布地に、職人がすべて手書きで仏像を描いた掛け軸は「絹本(けんぽん)」とよばれ大変貴重な掛け軸ですが、その分とても高価です。
そのほか、仏像をプリントしているタイプのものや、近代的でおしゃれな仏壇にも映えるモダンなものなどさまざまな種類があり、価格にも大きく幅があります。
掛け軸を購入する際はできるだけ自分の目で実物を見て、掛け軸の仕上がりや仏壇とのバランス、価格を確認することが大切です。
掛け軸のお手入れ方法
掛け軸の材質は強くないので、正しいお手入れをして丁寧に扱う必要があります。
長く使用するものなので、お手入れの仕方や注意点はしっかり覚えておきましょう。
湿気や直射日光をさける
掛け軸は湿気に弱いので、できるだけ湿度の低く風通しのよい場所に仏壇を設置するか、換気などを適切に行うようにします。
また直射日光があたると色あせや急速な劣化の原因になってしまうので、なるべく日陰になるようにしてください。
やさしくほこりを払う
ほこりが気になる場合や日々のお手入れとしては、毛先のやわらかい筆や、やわらかめの乾いた布でやさしくほこりを払います。
濡れた布を使うと、水分のついた部分が変色してしまうことがあるので注意してください。
専門店に依頼する
日ごろ丁寧に扱っていても、時が経つとどうしても古くなり痛みます。
古くなった掛け軸は専門店で修理・修復をしてくれる場合もあるので、実際の掛け軸の状態を見てもらい、相談することをおすすめします。
修繕に出す場合は魂を抜いた状態にするので、きれいな姿で戻ってきた掛け軸にはもう一度菩提寺で魂を入れてもらい、仏壇に掛けます。
掛け軸の供養・処分
掛け軸は仏像やお位牌と同じ扱いなので、処分する際はきちんとした手順を踏む必要があります。
当然のことながら、処分をしてしまうともうその掛け軸は再現できないので、納得がいってから処分をすることをおすすめします。
魂・お性根を抜く
掛け軸は開眼供養を行ってから仏壇にお祀りする、ということを説明しましたが、処分をするときには掛け軸に入れた魂を抜かなければいけません。
これを「閉眼供養」または「お性根抜き」といい、檀家であれば菩提寺に依頼します。
菩提寺がない場合はかわりに、ご供養仕舞い専門業者に依頼することも可能です。
閉眼供養を行うことで「絵」に戻り、処分ができるようになります。
お焚き上げ
閉眼供養を行って魂が抜けた掛け軸はただの「絵」として扱うことができるので、一般の家庭ごみとして処分しても特に問題はありません。
しかしやはりごみとして処理するのは心苦しいと思う方も多いことでしょう。
そのため菩提寺やご供養仕舞い専門業者に依頼して、お焚き上げなどの焼却処分を行ってもらうのが一般的です。
掛け軸はどこで購入できるのか
最近ではインターネットの通信販売でもさまざまな掛け軸を購入できますが、やはり専門の仏壇店、仏具店に足を運び、実物を見比べるのが理想的です。
宗派によってそろえるべき掛け軸も違いますし、掛け軸の大きさやデザイン、価格もさまざまなので、専門の知識を持っている方に相談しながら検討すると安心です。
また取り扱いなどの細かい注意事項も確認できるので、ぜひ一度お近くの専門店へ行ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
ここまで掛け軸の種類や扱い方などを説明してきましたが、掛け軸を選ぶ際は、どこになんのために掛けるのかをよく考えて決めることが大切です。
仏壇に祀られている掛け軸には魂が宿っているので、礼拝するときには心を込めて手を合わせるようにしましょう。
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