彼岸会とは、春と秋の2回行われる仏教の法会のことです。それぞれ春分の日と秋分の日を中日(ちゅうにち)とし、前後3日間を合わせた計7日間が彼岸会の期間となります。
お彼岸は寺院へ詣でたり、お墓参りをしたりする期間ということは広く知られています。今回は、この風習ができた由来や「彼岸」という言葉の意味について詳しくご紹介します。
彼岸会とは
3月の仏事として「春の彼岸会(ひがんえ)」、同じく9月には「秋の彼岸会」があります。この行事は、彼岸会の期間中、仏教各宗派とも僧侶はさまざまな法要儀式を執り行い、在家信者はお寺に詣でたりお墓参りをしたりして、ご先祖の霊を慰め、その成仏を祈る風習です。
インドや中国には存在せず、日本独自の習俗が仏教の概念と結び付いて生まれたものと考えられています。一説には聖徳太子の頃に始まり、平安時代から江戸時代にかけて習慣化、年中行事化したといわれていますが、起源については定かではありません。
また、彼岸会の期間中に行う「六波羅蜜行」という仏教の修業も存在します。
彼岸会の時期
彼岸会は、「彼岸」「お彼岸」とも呼ばれます。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉は誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。
彼岸会は春と秋の2回あり、春の彼岸会は毎年の春分の日を、秋の彼岸会は秋分の日をそれぞれ中日として前後の3日ずつ、計7日の間に行われます。春分の日と秋分の日を中日に含む彼岸会は、それを境に厳しい冬の寒さや夏の暑さに別れを告げる、一つの節目でもあるのです。
3月17日(土)から3月23日(金)までの7日間。
お彼岸の中日となる春分の日は、3月20日(火・祝)です。
2023年の秋のお彼岸
9月20日(水)から9月26日(火)までの7日間。
お彼岸の中日となる秋分の日は、9月23日(土・祝)です。
仏教における「彼岸」の意味
もともと「彼岸」というのは、ある季節や期間を表す言葉ではありませんでした。
彼岸とは、サンスクリット語の「パーラミター」(波羅蜜多)の訳語で、この世のさまざまな苦しみや煩悩から離れ、悟りと安らぎの世界である浄土や涅槃(ねはん)に至ることを、川の向こう岸へ渡ることになぞらえた仏教用語です。それに対して、私たちが人間として生きる現実の世界を「此岸(しがん)」、つまり川のこちら側と呼びます。
彼岸会の中日に当たる春分の日や秋分の日は、昼と夜の長さが逆転する区切りの日でもあるため、これが生から死、死から生へと転じる時期と考えられて、此岸・彼岸の意味と結び付いたのかもしれません。
彼岸会の期間に行う「六波羅蜜行」
彼岸と此岸の間には、さまざまな苦悩と煩悩の水であふれる大河が流れているといわれています。この川を、「現世に生きる人間としての姿のまま渡るために必要な舟」として例えられるのが、仏教の「六波羅蜜行」です。
「六波羅蜜行」とは、人のために見返りを求めず良いことをしたり、施しをしたりする「布施(ふせ)」、自らを戒めながら規律を守り、規則正しい生活を送る「持戒(じかい)」、苦痛や屈辱を耐え忍び、寛容な心を持つ「忍辱(にんにく)」、怠けの心に打ち勝ち、目標に向かってひたむきに努力・前進する「精進(しょうじん)」、心の乱れと動揺を鎮め、静かな心で真理を思惟する「禅定(ぜんじょう)」、正しい行いをするために、仏の正しい知識を身に付ける「智慧(ちえ)」の6つの修業からなる行のことです。彼岸会の期間中、中日はご先祖様に感謝し、残りの6日間はこれらの修業を一日一つずつ行うことで、仏の悟りの境地すなわち彼岸に近づくことができるとされています。
彼岸会は、此岸から彼岸へ思いを馳せ、彼岸へ渡ったご先祖や仏教者の霊の安らかならんことをお祈りするのみならず、日頃見失いがちな、自分自身の立つ此岸をはっきりと見つめ直す機会でもあるのです。
彼岸会のお供え物
彼岸会の時にお墓やお仏壇に供えるお供え物には、特に決まったものはありませんが、一般的には「ぼたもち」が多く用いられるようです。ちょうど牡丹の花が咲く3月ごろの時期に春の彼岸会が行われることにちなんで、「牡丹餅」と書くぼたもちをお供えする習慣が生まれたといわれています。なお、秋の彼岸会では一般的に「おはぎ」をお供えしますが、こちらも秋に咲く萩の花に由来します。
「ぼたもち」と「おはぎ」は、呼び名は違いますが同じものです。
ぼたもちやおはぎを作るために使用される小豆には、邪気を祓い、魔を除ける効果があると信じられており、同じくぼたもちやおはぎに使われるお餅にも、五穀豊穣や家族の健康を願う意味が込められています。
こうした習慣から、彼岸会には魔除けや五穀豊穣の意味を込めてぼたもちをお供えし、墓前やお仏壇にお供えするようになったといわれています。
まとめ
今回は、彼岸会の由来や風習などについてまとめました。お彼岸にはお墓参りをし、お供え物をし、真心からご先祖の霊に手を合わせます。折に触れてこの世(此岸)とあの世(彼岸)の結び付きに思いを馳せる、このような行いは、お彼岸の期間のみならずいつでも大切なことといえるでしょう。
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