自宅でお祀りしている神棚、掃除しなければいけないと思いつつも、高いところに設置してあるためつい掃除が行き届いていないということはよく聞く話です。
掃除しようと思っても「神様がいる場所なのでどのように掃除したらいいか分からない」、「年末に掃除してもいいの?」「女性が掃除してもいいのか」などと疑問がたくさん浮かびます。今回は自宅の神棚の掃除について、やっていいこと、やってはいけないことも含めてご紹介していきます。
日本古来の宗教である神道では、神棚とは各家庭にある小さな神社だとされています。
神棚にお札を置くことで、そこに神様がいらっしゃると考えるのです。
巫女さんたちが毎日神社を綺麗に掃除するように、神様が気持ちよく過ごしていただくために、神棚の掃除は大切なことなのです。
神棚を掃除する人
「女性は神棚掃除ができない」は嘘?
「女性は神様に触ってはいけないから、神棚の掃除もしてはいけない」という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
昔から女性である天照大神が嫉妬するから、女性は穢れているからなどのさまざまな理由で女性は神様に触ってはいけないという話があります。しかし、よく考えてみれば女性神主も多くいらっしゃいますし、過去には女性の天皇も存在していました。女性だからという理由で神棚に触れられないということはありません。
ただ、神棚を掃除する人が気をつけなければいけないのは、「穢れ」がないかという一点です。
神棚を掃除する人が気をつけるべき「穢れ」とは
神道では「穢れ」として出血や病気を嫌うといわれています。
男女問わずに出血中の人や、病気の人は、神棚に触れる時に注意しなければいけません。
少し前の時代には、巫女さんも生理が来たら仕事が途中でも帰宅し、終わるまで境内に立ち入れないといったこともあったようですし、怪我をしている人や病気をしている人は厳密には境内に入れなかったそうです。
これは、医療が発達する前の世の中では、出血や病気が死と非常に近かったからだと考えられています。
医療が発達した現代では、塩や鏡を身につけることで、生理中の女性や怪我をした男性などでも神棚の掃除をして神様に触れることが許されるといわれています。
神棚を掃除する時期時間帯
日々の暮らしの中で、神棚を掃除する時間帯については特に明確に決められていません。
時間帯についても昼でも夜でも大丈夫。気分的には朝の時間帯、明るい光の中で掃除をした方がキレイになりそうな感じがしますが、忙しい場合は夜に行っても何も問題ありません。
とはいうものの、神棚の掃除のタイミングは、年末の大掃除でキレイにするという方が一番多いのかもしれません。
ただ、年末の時期には掃除をしてはいけないと言われている日が2日あります。
12月29日と31日が神棚掃除に適さない理由
年末年始の神棚掃除にふさわしくないと言われているのが、12月29日と12月31日の2日です。
29日は、9という数字が「苦しみ」を連想させ、「二重に苦しむ」という言葉につながるとして、神棚掃除にふさわしくないとされています。
12月31日は翌日に新年を控えて慌ただしい中、滑り込みで掃除を行うような雰囲気になりがちです。この慌ただしい雰囲気が、神棚掃除に良くないとされる理由なのです。
急に不幸が訪れた時、お通夜やお葬式などで慌ただしく祭壇を作ることがあると思いますが、そのような不幸を連想させるため縁起が悪いと言われているのです。また神様に対して失礼という場合もあります。
年末年始に神棚の清掃をする場合は、12月29日よりも前に行うのがいいでしょう。
神棚を掃除する頻度
神棚を掃除する頻度ですが、これも特に決まってはいません。
自宅の神棚が汚れた状態で放置されないようにさえ気をつけていればどのくらいの頻度で掃除しても問題ありません。
台所にお祀りするか、リビングにお祀りするか。ペットの有無や湿気の量など、生活の環境などによっても汚れ方が変わります。常に気にかけて置くことが大切です。
事前に決めておかないと忘れてしまいがちという方は、年に2回を目安にするのがおすすめです。
12月の大掃除のタイミングと、6月に行えば、穢れをはらう神社の行事「大祓え」の時期とも一致します。
神棚を掃除するときのマナーやタブー
神道は八百万の神様たちをお祀りしており、歴史も古く、ほかの宗教に比べるとおおらかな宗教と言われています。
ただ、神様をお祀りしている神棚の掃除に関しては、やはり神様に失礼にならないように礼儀に気をつけ、タブーを侵さないことが大切です。
掃除する前、掃除中、掃除した後のシチュエーション別にマナーとタブーをご紹介します。
掃除する前
神棚は神聖な場所で、家庭の中の神社と考えられています。
神社で神様にお会いする時、手水場で口の中と手を洗うように、掃除の前にも身を清め、これから掃除をする旨を神様にお伝えすることが大切です。
身を清めるためキレイな水で口をすすぎ、手を洗う。
神社同様、二礼二拍手一礼を行い、これから掃除するむねを神様に伝えましょう。
掃除するとき
神棚を掃除する時にも、気をつけなければいけないことがたくさんあります。
今から紹介することは「神様のいる場所を掃除する」という観点で考えると当たり前のことではありますし、そんなに難しいことではありません。神棚の掃除をする時は、儀式の一つのような心構えで掃除をしましょう。
床に置く
神様のいる場所を床に置くことは礼儀を失しています。止むを得ず床に置く場合は、清潔な白い布の上にそっと安置します。
使い古しの雑巾を使う
当然のことですが、床や棚など、ほかの場所の掃除に使った雑巾を使用するのは避けましょう。「神様を清める」と考えれば、このタブーについてもよく分かると思います。
また、神棚はヒノキやケヤキの素地で作られていることが多いため、水拭きをすると変形や、カビの生える原因になります。清潔なタオルで乾拭きするようにします。
息を吹きかける
神棚は入り組んだ形をしているため、手が届きにくい場所に積もったホコリに対し、つい息を吹きかけてしまいそうになりますが、これも避けた方がよいでしょう。
息は人間の穢れの象徴と言われているので、神棚に息を吹きかけることは控えましょう。
お札を取り出すとき
神棚の掃除の中で、最も気をつけなければいけないのがお札です。
お札には神様が宿っているとされています。
お札を取り出すときには、口に和紙を加えることが望ましいとされています。
これは前述したように、穢れとされる人間の息を間違っても神様に吹きかけないようにするためです。
掃除した後
掃除の際、お札を新しく交換することがあるかもしれません。
お札のほかにも、紙垂(しで)やしめ縄なども交換することがあると思いますが、これらをそのまま燃えるごみに出すのはタブーです。神社に古札として納め、お焚き上げをしてもらいましょう。
神棚掃除の道具
神棚掃除に必要な道具は以下の通りです。
・きれいな布(数枚)
・白い和紙(お札を取り出す際に咥える用)
・白い布(神棚を一時的に机の上におく際に敷く用)
・ブラシやはたき(神具店には神棚専用のはたきがあります)
・お供え物(米お神酒水塩など)
・交換する場合はお札、榊や紙垂、しめ縄など
神棚の掃除方法
それでは具体的に神棚の掃除の手順をご紹介していきます。
掃除の手順
1.身を清める
2.神様に掃除をする旨をお伝えする
3.机に白い布を敷いて神棚や榊などをおろす
4.神棚を載せていた棚板を掃除する
5.白い和紙を加えて神棚からお札を取り出す
6.神棚を乾いたきれいな布や、専用のハタキで掃除する
7 再度和紙を加えてお札を戻す
8.神棚を棚板の上に戻す
9.お供え物や装飾などを正しい位置に並べる
10.神様に掃除が終わった旨を報告する
交換するもの
お札
年末の大掃除などでお札を交換する場合は、掃除の前に神様にご挨拶をする際、できるだけその家の家族全員でお礼と感謝の気持ちを伝えましょう。
しめ縄と紙垂
神棚にしめ縄を飾るのは神様の世界と俗世の境界を作る上で重要です。しめ縄と紙垂は、年末の大掃除の時に交換し、新しいもので新年を迎えるのが望ましいと言われています。
古いものの処分方法
神棚掃除の際、お札やしめ縄、紙垂を新しいものに交換した場合、古いものは白い和紙につつんで神社のお焚き上げに持って行って納めましょう。掃除に使った白い和紙や布やハタキはゴミに出しても構いません。
神棚掃除をプロに依頼する方法
神棚の掃除は普段お世話になっている家族で行えるのが望ましいですが、ご高齢で一人暮
らしの方などにとっては、高いところに安置してある神棚の掃除は想像以上に大変です。
神棚掃除ができないときは、プロに依頼するのも一つの方法です。
依頼先
神棚掃除を依頼するには、ハウスクリーニング会社、家事代行会社、便利屋などでお願いすることが可能です。
掃除のプロにお願いすれば、自分で掃除するよりも確実にきれいに仕上がりますし、中には「アク抜き」などで木の染みをとってくれる特別な掃除に対応している会社もあります。
掃除の費用感
神棚掃除については、基本的には見積もり問い合わせ対応となっている業者が多いようです。
いくつかの業者に確認したところ、神棚の掃除代行の相場はおよそ3,000円~となっているようです。もちろん神棚のサイズや構造によって金額は大きく異なります。
掃除以外に依頼できること
神棚掃除をプロにお願いするメリットは、神棚掃除以外のこともお願いできる可能性がある点です。
例えば、掃除の後に出たお札やしめ縄、紙垂などのお焚き上げを一緒にお願いすることができる場合や、掃除の後のゴミ捨ても請け負ってくれる業社もあります。
また、神棚が一部破損している場合などは、神棚修復サービスを行っている業者もあるようです。ただし、そこまでお願いする場合には、神仏具店などに相談してみるのもひとつの方法です。