神棚は、私たち日本人にとってある意味最も身近な宗教である神道の祭壇です。
多くの宗教には、ルールや戒律などが存在しますが、神道にはそう行ったルールや戒律は存在しません。何かの戒律に従うというよりは、自分の良心に従って周りの神々と共存するということが、神道の基本といえるかもしれません。そのため、神棚を処分するときの手順や方法にも明確なルールはありません。
今回は神様を祀る神棚を処分するとき、“自分の良心にしたがって”手順を踏むための方法をいくつかご紹介します。
神棚を取り替えるタイミングについて、お悩みの方も多いかもしれません。
前述したように神道にはルールが存在しないので、これも地域や神社の考えによってさまざまです。
自宅の引越しや建て替え、リフォーム
一般的な家庭で訪れる神棚の取り替えのタイミングは、自宅の引越しや建て替え、リフォームなどが考えられます。
新築や改築などで住居やお店を新しくした場合は神棚も新しくするのが望ましいとされています。
人間が住む家が新しくなった時は、神様のお住まいも新しくしたいものです。
式年遷宮に合わせたタイミングで
そのほかにも、毎年お正月を迎える前に神棚を新しくしているという人もいれば、伊勢神宮の式年遷宮に合わせて20年に一度を目安に新しくするという考えの人もいます。
神棚を取り替える時は、家の発展や事業の成功を祈って、前のものよりも一回り大きい神棚にする人も多いようです。
神棚の処分・買い替え時期の目安
神棚の処分や買い替えは、どのような時期に行われるのでしょうか。
汚れたり痛んだりしたら取り替える
神棚は無垢材で作られていることが多く、安置する場所が台所の場合は、仏壇に比べると痛んでしまうのが早いのが現状です。
伊勢神宮が、式年遷宮で新しくなるのは、「神様のいる場所は常に清浄でいなければいけない」という考え方からだとされています。
古いものを長く使うことが美徳とされる世の中ではありますが、もし神棚が痛んだり、汚れたりしてしまっていたら、処分や買い替えを考えてもいいかもしれません。
気分を一新したい時
また、悪いことが続いて気分が滅入ってしまったときなども、気分を一新するのに神棚を買い換えるのも良いでしょう。
まさに「困ったときは神頼み」という状況ですが、神棚を新調すると心が晴れやかになるので、良いことが起こるかもしれません。
神棚を処分することに抵抗があるという人も多いですが、きちんとした手順を踏んで神棚を処分し、買い換えるのは、神様を敬うために必要なことです。
神棚の買い替えの時期がよくわからないという場合には、神職の方に相談すると、交換するのに良い時期を教えてもらえる場合もあるそうです。
神棚の処分方法と費用の相場
神棚の処分には大きく分けて3つの方法があります。
その方法とは「祈祷する」「お札を神社にお返しする」「お焚き上げを行う」というものです。
神社で祈祷してもらう場合
神棚を神社に持参して、祈祷してもらうことで、神棚はただの箱となり、処分することが可能になります。
費用は各神社によって異なりますが、だいたい数千円くらいから。高いところでは数万円といわれています。神棚の大きさや、祈祷に立ち会うかどうか、個別に祈祷してもらうかどうかなどの祭事の規模によって金額が変わります。
お札を神社へお返しする場合
お札を返納して、神棚をお焚き上げするという方法です。
神社の古札返納所に返納して、年末年始や節分などに行われるお焚き上げに神棚を持参します。
一部の神社では、お札を納める時に費用がかかることもあるようですが、一般的には古札返納もお焚き上げも料金がかかることはほとんどありません。
ただし、神棚をお焚き上げする場合には、神職にきちんとお願いします。またお焚き上げできるものとできないものもありますので、合わせて確認するとよいでしょう。
お焚き上げをする場合
神社によっては、神棚は「特に何もせずに廃棄しても大丈夫」と言われることもあるようです。「神棚はゴミに出して、中のお飾りもそのまま捨てて構わないが、気になる場合はお焚き上げを」と言われることもあります。
ただし、神棚をゴミに出す場合でも、お札だけはきちんとお焚き上げをする必要があります。
前述したように、お焚き上げはほとんどの神社では無料で行うことができますし、ゴミ処分で粗大ゴミの料金が必要となったとしても、それは数百円のことです。
ただし、自治体によっては、神棚は回収できないとしているところもあるので、ゴミとして処理する場合は自治体にきちんと確認をとるようにしましょう。
神棚の処分方法を選択するポイント
神棚を処分する方法を3通りご紹介しましたが、意外にも祈祷をしてもらう以外には、ほとんど料金が発生しません。
では、神棚の処分方法はどのように選べばいいのでしょうか。
神棚に対する考え方
神棚の処分方法として「祈祷」「お札返納」「お焚き上げ」という3通りの方法をご紹介しました。
どの方法で神棚を処分するか迷うかと思いますが、神棚に対する自分の考え方と合っている方法を選ぶのがいいでしょう。
「神棚をゴミに出すなんてタタリがあるかもしれない」と心配になる方や「神様は神棚の中に宿っている」と考えてらっしゃる方、また「今まで神様にはとてもお世話になったから、感謝の気持ちを何かで伝えたい」と思う方は祈祷する方法がいいでしょう。
また、「神様は信じているが、あまり形にこだわらない。神棚をどう処分しても信じる気持ちに代わりはない」という方は、そのまま廃棄してしまってもかまわないのかもしれません。
前述したように、神道の基本は「自分の良心に従って神様と共存する道を歩くこと」ですので、最終的には自分の納得の行く方法を選択することが最も大切です。
費用面
神棚の処分方法、費用面で選ぶのであれば祈祷が最もお金がかかります。
自身の現在の状況を考えて、お礼の気持ちを込めて処分するようにしましょう。
もし、祈祷をしたくてもできないという場合でも、お焚き上げだけであれば無料でできる神社もあります。
感謝の気持ちを込めてお掃除をしてからお焚き上げをしましょう。
神棚処分の手順
それでは、実際の神棚の処分はどのように行われるのか、手順をご紹介して行きます。
祈祷する場合
神棚を処分するにあたり、祈祷が必要と考えている神社では、祈祷をお願いできます。
その場合、まずはお札を一旦外に出します。
お焚き上げをお願いするため、取り出したお札は和紙などに包んで保管します。
ホコリをかぶったまま神主さんに祈祷をしてもらうことがないように、今まで家族や事業を守っていただいた感謝の気持ちを込めて掃除をしましょう。
神職にお願いして、感謝の祈祷である「報賽(ほうさい。報祭)」を行っていただきます。
神棚を神社に持参する方法と、神職の方に自宅まで来ていただく方法があります。
神棚を持参するときには、大きな布などでくるみ、丁重に運びましょう。
その際、お札も一緒に持っていけばお焚き上げしてもらうことができます。
神社には社務所や祈祷受付所がありますので、事前に連絡した時間に持参するのが安心です。
祈祷の際に立ち会いたい場合は、その旨もお伝えしておきます。
祈祷が終わった後は、神棚は神社で廃棄処分してもらえるので安心です。
ただし、神具の中の鏡や金属類や、扉部分にガラスなどがついている場合はお焚き上げの前にはずす必要がある場合もあります。事前に神職と相談の上持参しましょう。
祈祷へのお礼として納めるお金を「玉串料」と呼びます。
神様への捧げ物としてお金を納めるため、熨斗(のし)袋を準備するのが礼儀です。
お札を返納する場合
お札を返納する場合も、神棚は一度しっかりとお掃除して感謝の気持ちをお伝えするのが大切です。
取り出したお札は、和紙などに包んで近所の神社の古札返納所に納めます。
古札返納所は、初詣の時期に特設される場合もあれば、神社の境内に常設されていることもありますので、事前に確認しておきましょう。
お札を返納した後は、神棚本体をお焚き上げします。
神社やお寺では、年末年始や節分の時期など年に数回お焚き上げを行っているので、そのときに持参すれば、大抵無料でお焚き上げをすることが可能です。
もしご自宅の周辺の環境が許すのであれば、庭などで焼却しても問題ないと言われています。その際はご近所の迷惑になることがないように気をつけましょう。
専門業者に依頼する場合
これまで、自分自身で神棚を処分する方法をご紹介して来ましたが、神棚を神社まで持っていけない、神棚が大きすぎて自分では処分できない、といった場合には不要品回収業者などの専門業者に依頼する方法もあります。
ただ回収するだけという業者から、処分する前に祈祷をしてくれるという業者までサービスはさまざまです。
複数の業者に見積りをもらって、きちんと責任をとって処分してくれそうな業者を探しましょう。
また、専門業者に依頼する際にも、お札は必ず取り出しましょう。ホコリなどを払い、清浄な状態で回収してもらうようにしたいものです。