蓮や沙羅、菩提樹など、仏教にゆかりのある植物がいくつかあります。樒(しきみ)も、仏教とつながりの深い植物です。葬儀や法要などの仏事で用いられることから、名前は知らなくても、何度か目にしたことがある方もいらっしゃると思います。
今回は、「樒とはどんな植物なのか」、「仏教と樒のつながり」、「樒と榊の違い」、「樒は葬儀でどのように使用されるのか」など、樒について詳しく紹介します。
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樒とはどんな植物なのか
樒は、光沢のある緑の葉が美しい常緑高木です。
3月から4月にかけて、淡い黄色のひらひらとした細長い花を咲かせます。主に寺や墓地の周りに植栽されています。樒は、花や葉、実、根、茎まで、すべてに毒性があり、特に実は、食べると死亡する可能性があるほど有毒で、植物として唯一、「毒物及び劇物取締法」により、劇物の指定を受けています。
樒という名は、四季を通じて緑が美しいので「しきみ」「しきび」と呼ばれるという説と、実が毒を持っているという意味の「悪しき実」から「悪」をとって「しきみ」と呼ばれるという説があります。また実が扁平な形をしていることから「敷き実(しきみ)」と呼ばれるという説もあるそうです。
樒と仏教のつながり
樒は、別名「仏前草」と呼ばれたり、「仏」の「木」という意味で「梻」という字も使われているように、宗派を問わず日本の仏教とつながりの深い植物です。樒は、花の形が天竺に咲く青蓮華に似ていることから、鑑真和上が日本に渡る際に、唐から持ち込んだという言い伝えがあります。
さらに、弘法大師が密教の修行の際に、青蓮華の代用として樒を使ったという言い伝えがあります。樒に、密の字が使われているのは密教とのつながりを示しているといわれています。
現代では、日蓮正宗のように、仏壇や墓には生花は供えずに樒のみを供えるという教えの宗派もあります。浄土真宗でも、華瓶に水を入れ、生花ではなく樒を挿して、香水として仏壇に供えています。
樒と榊の違い
樒と神事で用いられる榊は、どちらも常緑高木で形や色などが似ていることから、混同していらっしゃる方も多いと思います。樒はシキミ科、榊はツバキ科の植物で、見た目は似ていますが種類が異なります。榊は、漢字の通り、「神」の「木」として神事で使われています。
榊は「境木」とも書き、神域と俗界との結界を示すために神社の周りに植えられています。
かつては、樒も榊のように「境木」として、神社でも用いられていたそうです。京都にある愛宕神社では、現在でも樒を神事に用いているそうです。
樒と榊は、葉の形で見分けることができます。樒の葉は波打ったような形で、榊は平べったい楕円形です。榊は生花店だけでなく、スーパーなどでも購入できますが、樒は生花店でも販売している店は少なく、通販や葬儀社、仏具店などで購入することができます。
樒の香り
「抹香臭い」という言葉がありますが、この樒の香りのことを指しています。抹香とは、葬儀や法要の際に、お焼香で使う粉末状の香のことで、樒の樹皮と葉を乾燥させたものなのです。抹香のほかに、線香の材料としても使われています。
ちなみに、樒の「illicium(イリシウム)」という学名は、ラテン語で「魅力で引き付ける、誘い込む」という意味の「illicio」が語源となっています。つまり、香りで引き付けられる木という意味です。
樒は、白檀のような香木がほとんどない日本においては、香木の代用品として使われてきました。
独特の香りと強い毒を持っていることから、邪気を払う力があるとされ、悪霊除けやお清めとして使うほかに、土葬の遺体を動物から守るために、樒を墓の周りに植えていたそうです。現在でも、通夜まで自宅で遺体を安置する際の枕飾りの仏具と一緒に一本花として供えたり、納骨式に樒を供えるのは、その名残りです。
また、ひと昔前までは、遺体の腐乱臭を防ぐために、納棺の際に、ドライアイスの代わりに樒を棺に敷き詰めていました。
葬儀での樒の使われ方
樒は仏壇やお墓に供えるほかに、葬儀の飾りとして使われています。葬儀に飾る風習は、京都や大阪などの主に関西地方の葬儀で見られます。葬儀では、大樒を自宅の玄関や寺の門前などに立てて参列者を迎えます。そして、祭壇の両脇後ろに二天樒を立てます。この4つの樒で結界をつくり、亡くなった人を邪気から守るとされています。また、花輪の代用品として門樒を葬儀会場に並べますが、門樒は場所をとるので、紙や板に名前を書いた紙樒や板樒を並べることが多くなっています。
現在では、全国的に祭壇は生花で飾られていまが、京都では祭壇に生花を飾らずに、樒を飾っている地域もあります。
まとめ
樒についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。菊や蘭などの生花と比べると華やかさがなく地味な樒ですが、仏教とのつながりなどの意味を知ると、樒に対する思いも変わってきます。
実際には、葬儀での樒の使い方や手配の仕方など、ご不明なことが多いと思います。また葬儀に関する些細な事でも構いません。どうぞ、お気軽にお問い合わせください。
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