毎年お盆になると飾る盆提灯は、先祖や故人の霊が迷わないよう、仏壇や盆棚の前、窓や玄関などに置く仏具です。
特に新盆には、白い提灯を飾り、故人の霊を迎え入れます。仏壇の前や盆棚(精霊棚)の前には奇数ではなく、一対、二対と2個ワンセットで盆提灯を飾るのが風習とされています。
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盆提灯とは、迎え火、送り火としてお盆の際に使用する提灯のことを指します。地域によっては、親族や故人と親しかった人々が、新盆(にいぼん、しんぼん、あらぼん)または初盆(はつぼん)を迎えた家に盆提灯を贈るという風習が残っています。
ただし、真宗においてお盆は、仏様である故人の霊を通して教えを授かる「歓喜会(かんぎえ)」に位置づけられています。そのため、特別なお盆飾りや盆棚を設けず、仏壇は通常の飾りつけをするのが正式とされています。
盆提灯にはさまざまな種類がありますが、何よりも先祖や故人への気持ちが大切なので、ご自宅に相応しい盆提灯を選んで飾るのがよいでしょう。
盆提灯の意味・役割
盆提灯を飾る意味とその役割について紹介します。
盆提灯を飾る意味
盆提灯は、先祖や故人の霊が迷わずに家まで戻ってこられるようにという意味を込めた、目印の役割を果たすものとされています。
そのため、仏壇や盆棚の前や、玄関、軒先などに飾るのが一般的です。
飾る数の持つ意味
盆提灯は通常、一対、二対というように対にして飾ります。しかし、盆提灯を飾る数には、厳密な決まりなどはありません。従って好きなだけ並ても問題はなく、例えば一対でなく一つでも構いません。
ただし、地域の風習などによって違いもあり、たくさんの提灯をお供えするところや、提灯が多いほど故人が周囲に慕われていたと考えるところなどもあるため、お寺や親せきなどに確認しておくとよいでしょう。
最近は都会の住宅事情により、マンションや賃貸に住む方も多いため、スペースを取らない小型の提灯を置く家庭も増えています。
盆提灯と白提灯の違い
盆提灯は、お盆に先祖の霊を供養するため、家族や親せきなどが用意して飾ります。それに対し白提灯とは、新盆、初盆のときにだけ使用される提灯のことです。
新盆とは、故人が亡くなって四十九日の後、はじめて迎えるお盆のことです。新盆の家では、はじめて帰ってくる故人の霊が迷わないための目印として、白提灯を玄関や窓際、仏壇の前などに吊しておきます。
白提灯には、清浄無垢の白で故人の霊を迎えるという意味が込められており、白木で作られた白紋天の提灯と呼ばれるものが一般的です。
また、盆提灯は一対で飾るのに対し、白提灯は一つだけ飾ります。飾るのは新盆の間だけなので、お盆が終わった後、送り火で燃やしたり、菩提寺に納めるなどして処分します。
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盆提灯を飾る時期・期間
盆提灯を飾る時期は、お盆の迎え火や送り火のタイミングに合わせます。そのため、お盆の入りである8月13日(東京など関東の一部では7月13日)までに準備しておくのが一般的です。しかし、実際には8月に入ったらすぐに飾り始めるという方も多いようです。
盆提灯の灯りは、お盆の期間中である8月13日~16日の間灯しておくのが一般的ですが、地域などによってもルールが異なるため、お寺や仏壇仏具店などにあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
盆提灯の種類
盆提灯は大きく、「吊り提灯」と「置き型の提灯」の二つに分けられます。最近では、住宅事情やライフスタイルに合わせた、質の良い提灯を揃える傾向が強まっています。
盆提灯の種類
代表的な種類の盆提灯について紹介したいと思います。
新盆用盆提灯(白提灯)
新盆のときにだけ使用する白い提灯です。はじめて家に戻ってくる故人が迷わないように、「白紋天」と呼ばれる白い盆提灯を玄関や窓、仏壇や盆棚の前に置き目印とします。
新盆が終わったら、送り火と一緒に燃やすか、菩提寺に依頼して処分してもらうのが通例とされています。
盆提灯(御所提灯)
御所提灯とは、吊す形式の提灯です。家紋入りのものと、家紋がないものがあります。新盆用の白提灯も、御所提灯の一種です。家紋を入れる場合、2~3週間程度の製作期間がかかります。
そのため、納期を考慮したうえで、仏壇仏具店に依頼するようにしましょう。
回転行灯
回転行灯とは、置く形式の提灯のことです。点灯すると、火袋に付属した筒が回転することで、美しく華やかに絵柄が変化するのが特徴です。
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大内行灯
大内行灯とは、3本足の置き型提灯のことで、一般的な盆提灯として使われるタイプです。家紋を入れるものもあります。前述したように、家紋を入れる場合は、制作期間を考慮するようにしましょう。
回転霊前灯
回転霊前等も、置く形式の提灯の一つです。点灯時、火袋に付いた筒が回転することで、絵柄が美しく変化します。
火袋の種類
火袋(ひぶくろ)とは、盆提灯の明かりが灯る部分のこと指します。火袋にはさまざまな種類があります。「御所」と呼ばれる壺型の火袋は、日々仏前に読経や回向をするときに使われます。
御所よりも少し丸みを帯びた円形の火袋は、「御所丸」と呼びます。ほかにも、置き方の提灯で、円形の火袋の「行灯」や、背の高い円筒状の吊し提灯である「住吉」などもあります。九州地方北部では「博多長」と呼ばれる吊し提灯も用いられます。
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宗派による違いについて
盆提灯は、宗派による違いはありません。従って、ご家庭の都合などに合わせ、お好きなものを購入するのがよいでしょう。
盆提灯の選び方
盆提灯を選ぶうえでのポイントについて説明します。
柄の有無
地域や風習によっても異なりますが、新盆に親せきや知人が盆提灯を贈る場合は、毎年使える絵柄が入ったものを贈るのが一般的です。絵柄は好きなものでよいのですが、故人が好きだった花などにする方が多いようです。
一方、新盆用の白提灯は、その年だけしか使わないため、ご家庭で準備します。
絵柄の技法
絵柄を入れる技法には、描き絵、摺込み絵、プリントなどさまざまなものがあります。
絵柄には、秋の七草や桔梗、菊などをモチーフにしたものが一般的です。中でも有名なものが、「岐阜提灯」と呼ばれる、日本独特の伝統工芸品です。
美濃和紙や絹布に、繊細な自然の風景や植物などの絵柄をあしらった提灯です。また、最近では家紋を入れた提灯を購入される方も増えています。
材質・素材・産地
提灯の表面である絵柄を載せる部分の素材は和紙か絹が一般的です。和紙は、手すきのものと機械ですいたものがあります。また、美濃和紙、楮和紙、化学繊維と細分化されていきます。
口輪の素材には木や竹、プラスチック、紙などが使用されます。大内行灯と呼ばれる、足に高級な木材を使用した盆提灯などもあります。
盆提灯の産地で最も有名なのが、岐阜県と福岡県の八女です。岐阜県の岐阜提灯と、福岡県の八女提灯は、どちらも経済産業大臣指定伝統的工芸品の指定を受けています。
また、以前は岐阜に近い名古屋なども、全国有数の提灯の産地でした。
一方、関東地方では茨城県の水戸が水府提灯の産地として栄えてきました。
価格
盆提灯は、数千円、数万円代のものから、高いものでは100万円程度のものまであり、価格帯が非常に広いです。
盆提灯の価格は、火袋や口輪の素材に何を使うかによって変動します。大内行灯と呼ばれる足が木製で作られた盆提灯は高級品の部類に入りますが、これも素材や作りなどの違いで価格が大きく変動します。
また、回転行灯は、火袋に汎用的な和紙を使用し、足の素材もプラスチック製のものが多いため、比較的安価なのが特徴です。
贈答用
贈答用の盆提灯には、先ほども説明したように、絵柄の入ったものを贈るのが一般的とされています。また、盆提灯は一対で飾るのが正式ではありますが、昨今の住宅事情に合わせ、敢えて一つだけ贈ることや、提灯用の現金を渡すケースも増えています。
のしを掛ける場合は、表書きに「御佛前」と書きますが、関西の一部では「御供」と書くところもります。贈り先のお盆の準備に間に合うように、届ける期日は必ず確認しておきましょう。
なお、近年は住宅事情などもあり、事前に遺族の意向を確認してから提灯を贈る方も増えています。
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盆提灯・白提灯の飾り方
盆提灯の飾り方を、白提灯との違いも含め説明したいと思います。
飾り方
盆提灯を飾る場所は、基本的には盆棚か仏壇の前です。盆提灯は対で置くのが正式とされているため、一対、二対となるように飾っていきます。盆棚を設置していない場合は、仏壇の前にお供えものを置き、その周りに盆提灯を飾っていきます。また、仏間がない家庭や小型仏壇の場合は、小型の行灯が販売されていますので、そちらを飾るとよいでしょう。
新盆の場合は、仏壇や盆棚の周りに柄の入った盆提灯を飾る以外に、白提灯を一つ飾ります。白提灯は、玄関や窓際、仏壇の前などに吊すのが一般的です。
灯の灯し方
最近の盆提灯は電球式のものが多いため、基本的に電源を入れれば灯りが灯ります。吊り提灯には、火袋の中にローソク立てが付いているため、ローソクに火を灯すことで灯りが灯りますが、危険なため火を灯さずに飾ることも多いです。
盆提灯用の「ローソク電池灯」と呼ばれる、安全性の高い商品なども販売されています。一方、白提灯もローソクの火を灯すことが正式なルールなのですが、こちらも同様に火を灯さずに飾るか、ローソク電池灯を使用するケースが増えています。
使い回しについて
通常の盆提灯は、お盆が終わったら片付けて、来年以降も使用します。
一方、白提灯は新盆のときのみ使用するものであるため、お盆が終わった後、燃やして処分します。従って、使いまわすことはできません。
盆提灯の片付け、処分方法
絵柄の入った通常の盆提灯は、使い捨てではなく毎年飾るものです。従って、片付ける際には、火袋をよくはたき、各部品も拭くなど、きれいな状態にして箱で保管しておきましょう。
防虫剤も入れておくと、虫食いの心配もなくなります。盆提灯の数は、故人の人望を示すと考える地域もあることから、毎年数が増えていくご家庭もあるかと思いますが、そのような場合は飾る数を減らすというのも一つの方法です。
白提灯は本来、送り火で燃やしたり、自宅でお焚き上げしたりした後、お寺で処分してもらうのが習慣でした。しかし最近では、一部を燃やした後、すぐに火を消し、ゴミとして処理することが多くなっています。
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まとめ
先祖の霊を正しく導くために使う盆提灯ですが、昨今の住宅事情などにより従来の形で行うことが困難になってきました。
一方で、近年では一風変わったかたちの盆提灯も登場しています。洋風のリビングに合いそうなデザインのものから、例えば、瓶や帽子など日用品や鳥などの姿を模したものなどさまざまです。中には、アニメのキャラクターをかたどった提灯もあります。故人らしさを表す
さらに、音に反応して明かりをつけたり。
伝統を守りながらも提灯も日々、変化を続けています。
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