浄土真宗の仏壇・仏具の選び方、飾り方

浄土真宗の仏壇・仏具の選び方、飾り方

浄土真宗の門徒になられたばかりの方や、新しくご自宅に仏壇を迎えることになった際、多くの方が「どのような基準で仏壇や仏具を選べばよいのか」「具体的にどのように並べるのが正しいのか」という疑問を抱かれます 。他宗派における一般的な先祖供養のイメージ、例えばお位牌を安置したり、毎日お水やお茶をお供えしたり、お参りの際におりんを鳴らしたりといった作法は、実は浄土真宗の独自の教えの中では大きく異なります

さらに、浄土真宗の中でも特に門徒数の多い「浄土真宗本願寺派(お西)」と「真宗大谷派(お東)」では、仏具の形状や飾り方、さらには日常のお参りの作法に明確な相違点が存在します 。これらを混同してしまわないか、不安を覚えるのはごく自然なことです

この記事では、仏事専門ライターとしての確かな視点から、浄土真宗の仏壇・仏具の選び方、飾り方について詳細かつ網網羅的に解説します。この記事をお読みいただければ、お西・お東のそれぞれの正しいお祀り方法や、住環境に合わせたモダン仏壇での略式の飾り方、日々のお参りの作法がすべて理解できるようになります。また、実際に仏壇を購入する際に知っておくべき、お得なポータルサイト「いい仏壇」の割引クーポン利用法やギフトカード還元の特典情報までを徹底ガイドします

浄土真宗の仏壇の選び方における基本知識とモダン化

仏壇は単なる調度品ではなく、ご家庭における極楽浄土の縮図であり、日々阿弥陀如来に手を合わせるための最も大切な空間です 。その選び方には独自の背景が存在します。

金仏壇が伝統的に選ばれてきた理由とその象徴的意味

一般的に「浄土真宗といえば金仏壇」というイメージが強く根付いています 。これには深い信仰上の理由があります 。浄土真宗において、仏壇は阿弥陀如来のいらっしゃる「極楽浄土(安養浄土)」を再現した場所です 。極楽浄土は、まばゆい光に満ち満ちた極めて美しく、清らかな世界として説かれています 。そのため、金箔や金粉をふんだんに用いて黄金色に輝かせることによって、目に見えない浄土の世界を具現化し、門徒に対してその素晴らしさを伝えるための「表現装置」としての役割を担ってきたのです 。また、伝統的に金は最高位の気高さと不変性を表す色であり、阿弥陀如来への最上の敬意を示すためにも金仏壇が重用されてきたのです

近年の住環境に適したモダン仏壇・唐木仏壇の広まり

一方で、住宅環境の大きな変化に伴い、金仏壇を設置できる大きな和室や仏間を持たないご家庭が増加しています 。このような状況を受け、現代では金仏壇に限定せず、黒檀や紫檀などの高級木材を使用した重厚な「唐木仏壇」や、リビングのインテリアに自然に溶け込むデザインの「モダン仏壇(家具調仏壇)」を選択するお宅も急速に増えています 。浄土真宗においては、どのような仏壇を選ぶかという形式よりも、そこに御本尊をお迎えし、親鸞聖人の教えに耳を傾けながら阿弥陀如来に感謝を捧げるという心が最も重要視されます 。そのため、住まいや家族のライフスタイルに調和する最適なサイズの仏壇を選ぶことが勧められます

本願寺派(西)と真宗大谷派(東)における宮殿デザインの違い

伝統的な金仏壇を選択する場合、門徒は必ず自分の属する宗派(お西かお東か)を正確に確認し、それに適合したお仏壇を選択しなければなりません 。最も大きな相違点は、仏壇の内部にある「宮殿(くうでん)」と呼ばれる御本尊を安置するための小さな建物風の装飾部分にあります

これらはそれぞれの本山である京都の「西本願寺」と「東本願寺」の阿弥陀堂の建築様式を忠実に再現しているため、細部のデザインに明確な違いが施されています

比較項目浄土真宗本願寺派(お西)真宗大谷派(お東)
本山(所在地)

西本願寺(京都)

東本願寺(京都)

宮殿の屋根構造

一重(いちじゅう)の杮(こけら)葺き屋根

二重(にじゅう)の瓦屋根

宮殿の屋根の色彩

屋根の大部分に金箔を施した、すべてが金色のデザイン

黒い漆塗りの部分が随所に露出するデザイン

宮殿の柱の仕様

金箔を押した柱の上に、さらに金色の錺(かざり)金具が施される

黒い漆塗りの柱の上に、金色の錺金具が施される

全体的な印象

金色が全体を覆い、温かみのある一体感がある

黒漆の漆黒と金箔の対比が強く、荘厳で引き締まったコントラスト

このように、お西とお東では、伝統的な金仏壇の宮殿部分の造作が全く異なります 。ご自身の宗派を確認せずに購入してしまうと、本山が推奨する伝統的デザインと不一致が生じるため、店頭でしっかりと確認することが求められます

浄土真宗ならではの仏具の選び方:本尊・脇侍・法名軸・過去帳

浄土真宗における仏具の選定には、この宗派ならではの死生観や特異な思想が反映されたものが多く見られます 。他宗派の常識が通用しない部分もあるため、細心の注意を払いましょう。

御本尊「阿弥陀如来」の掛け軸に描かれた後光の違い

浄土真宗において信仰の対象となる御本尊は、人々を必ず救い取ると誓われた「阿弥陀如来」のみです 。御本尊にはお姿を彫り出した「仏像」と、お姿が描かれた「掛け軸」の2種類があり、どちらを安置しても問題ありません

ただし、掛け軸を飾る場合には注意が必要です 。描かれている阿弥陀如来のお姿は一見そっくりですが、頭部から放射される光線、すなわち「後光(ごこう)」の本数が宗派によって異なります

  • 浄土真宗本願寺派(お西):頭上から放射される後光が 8本

  • 真宗大谷派(お東):頭上から放射される後光が 6本

この本数の違いはそれぞれの宗派の経典理解や教義に基づく極めて重要で神聖な相違点であり、間違えることは避けなければなりません

左右を固める「脇侍」の宗派別選定基準

御本尊の左右にお祀りする掛け軸を「脇侍(わきじ、またはきょうじ)」と呼びます 。これも宗派を正しく表現するための最も基本的な仏具ですが、お西とお東で飾る対象が全く異なります

  • 本願寺派(お西)

    • 向かって右側:「親鸞聖人」の絵像をお祀りします 。この時、絵像の親鸞聖人が左向きを向いているタイプを使用するのが正式なルールです

    • 向かって左側:「蓮如上人」の絵像をお祀りします 。蓮如上人は室町時代に浄土真宗を中興した重要な僧侶です

  • 大谷派(お東)
      • 向かって右側:「十字名号(じゅうじみょうごう)」と呼ばれる掛け軸をお祀りします 。ここには「帰命尽十方無碍光如来(きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)」と記されています

      • 向かって左側:「九字名号(くじみょうごう)」と呼ばれる掛け軸をお祀りします 。ここには「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)」と記されています 。 (※大谷派において、名号ではなくお西と同様に右に親鸞聖人、左に蓮如上人の絵像を飾ることも許容されています

位牌を使用しない独自の死生観と、法名軸・過去帳による供養

多くの人々にとって、先祖供養の象徴と言えば「黒檀や紫檀、塗り金などの位牌」です 。しかし、浄土真宗では原則としてこれらの「位牌」を仏壇に安置しません 。これは他宗派と根本的に異なる浄土真宗最大の特色の一つです

他宗派では、亡くなった人の魂がこの世にとどまり、位牌を依り代としてそこに宿り続けると考えられています 。それに対し、浄土真宗では、阿弥陀如来を信じる門徒は死後すぐに極楽浄土へ生まれ変わり、誰もが平等に「仏(成仏)」になると教えられています 。したがって、魂が位牌に宿って留まるという思想そのものが存在しないため、位牌という形で個人の魂を祀る必要がありません

位牌を置かない代わりに、亡くなった方の法名(他宗派でいう戒名)、没年月日、俗名、享年などを記録・表示する仏具として、「法名軸(ほうみょうじく)」や「過去帳(かこちょう)」を使用します

  • 法名軸:布地の掛け軸に故人の法名を記したもので、お西・お東において位牌に代わる最も正式な仏具とされています

    • お西の掛け軸の飾り方:法名軸を仏壇内の左右の壁面に掛けますが、御本尊に対して「内側向き」(お互いを見つめ合うような向き)に飾るのがお西独自のルールです

    • お東の掛け軸の飾り方:法名軸を仏壇内の左右の内壁面に掛けますが、お西とは異なり、正面に向けてお参りする人からよく見える「正面向き」に飾ります

  • 過去帳:家系の系譜を記した帳面で、普段は見台(けんだい)と呼ばれる専用の台に載せ、仏壇の下段や経机の上に置いておきます 。見台に開いて置くことで、命日の近い先祖を偲びやすく、日々のご縁を感じることができます

寺院や特定の地域の習わしによっては位牌の使用を許可する例外もありますが、基本的には法名軸や過去帳を丁寧に扱うことが浄土真宗における伝統的な敬意の表し方です

項目浄土真宗本願寺派(お西)真宗大谷派(お東)
御本尊(掛け軸後光)

8本

6本

向かって右の脇侍

親鸞聖人(左向き絵像)

十字名号(または親鸞聖人)

向かって左の脇侍

蓮如上人

九字名号(または蓮如上人)

法名のお祀り方法

法名軸(仏壇内で内側に向けて飾る )または過去帳

法名軸(仏壇内で正面に向けて飾る )または過去帳

浄土真宗本願寺派(お西)における仏具の飾り方と配置ルール

浄土真宗本願寺派(お西)では、伝統を尊ぶ落ち着いた配置と、独自の黒色系仏具による「静寂」をテーマとした飾り方を構築します

お西専用の仏具の特徴

お西のお参りで用いられる仏具の代表的な色調は「黒色(漆黒や暗い発色を施した青銅や真鍮製)」です 。また、細かな仏具の細工にも明確なお西特有の形状があります

  • 土香炉(玉香炉):お線香を寝かせて供えるための香炉ですが、お西では装飾や彫りのない、つるりとした無地の青磁「玉香炉(たまごうろ)」を用います

  • 輪灯(菊輪灯):天井近くに吊り下げる真鍮製の灯りとして、菊の文様が施された「菊輪灯(きくりんとう)」を使用します

  • 吊灯籠:お仏壇を照らす灯籠の脚部分が、丸みを帯びた「猫足(ねこあし)」のものを用います

  • 供笥(くげ):お餅や和菓子を仏様にお供えするための台座を「供笥」と呼びますが、お西では必ず「六角形」の形をしたものを使います

お西のお仏壇における段階別の具体的な配置手順

伝統的な3段または4段の金仏壇を飾る場合、上段から順に秩序立って配置していきます

  1. 最上段(須弥壇)

    • 中央の一番高い場所に御本尊である阿弥陀如来(立像)を安置します

    • 御本尊の向かって右側に親鸞聖人(左向き)、左側に蓮如上人の掛け軸(脇侍)を飾ります

    • 仏壇の天井からは「猫足吊灯籠」と、極楽を象徴する吊り飾りである「瓔珞(ようらく)」、「輪灯(菊輪灯)」を吊り下げます

  2. 御本尊の直前(宮殿の足元)

    • 中央に炊きたてのご飯を入れた「仏飯器(ぶっぱんき)」を1つ置きます 。お西ではご飯を盛る器の台座として、黒色のものを使用するのが伝統です

    • 仏飯器のすぐ両脇には、一対(2個)の「華瓶(けびょう)」を置きます 。華瓶の中には清らかな水を満たし、青い「樒(しきみ)」の葉、またはそれに代わる常花を挿してお供えします

  3. 中段(中段から下段への移行部分)

    • 棚の上に逆三角形の布である「打敷(お西専用の三角打敷)」を挟み込み、その垂れ下がった布の上に仏具を配置します 。打敷は、夏用(紗など)と冬用(金襴など)を季節ごとに使い分けるのが正式な方法です

    • 香炉(玉香炉)、花立(一対)、火立(一対)などの具足を並べます 。正式には、香炉を中央に置き、その左右に一対の火立、さらに外側に一対の花立を配置する「五具足」で飾りますが、スペースが限られている場合は、中央に香炉、右に火立、左に花立を置く「三具足」に簡略化します

    • 具足の両脇に、六角形の「供笥」を一対置き、その上に丸く盛ったお餅などを供えます

  4. 最下段および手前部分

    • 向かって右側に「過去帳」を載せた見台を設置します

    • 仏壇の前には「経机(きょうづくえ)」を配置し、その上にお経本や「おりん(おりん布団を敷いたもの)」、線香を折って寝かせて置くための「土香炉(寝かせ線香用)」、お参りに使用する予備の線香を入れる「線香差し」などを整然とレイアウトします

真宗大谷派(お東)における仏具の飾り方と配置ルール

真宗大谷派(お東)では、黄金の美を強調した華麗な仏具と、複雑な吊り下げ配置を施し、浄土の広大無辺な輝きを余すところなく表現する特徴があります

お東専用の仏具の特徴

お東で使用される仏具の色調は、お西の黒調とは対照的に、美しく磨き上げられた「金色(輝く真鍮製や磨き仕上げ)」が主体です

  • 土香炉(牡丹透香炉):お東特有の非常に美しい香炉で、全体に牡丹唐草(ぼたんからくさ)の細かな「透かし彫り」の模様が施されているのが特徴です

  • 鶴亀燭台(火立):ローソクを立てるための台座ですが、お東では「亀の背中に乗った鶴が、口に蓮の葉をくわえている」という、非常に縁起が良く重厚な造形の「鶴亀燭台」を使用します 。これをお供えする際は、鶴の嘴(くちばし)の向きや亀の尻尾の位置にまで配置上のルールが存在します(鶴の口ばしは右に開き、亀の尻尾は手前を向くように置きます)

  • 輪灯(瓔珞付き):お東特有の飾り方として、法要やおめでたいお参りの際には、吊り下げた輪灯の上部に、さらにきらびやかな「瓔珞(装飾)」を取り付けるという豪華な作法があります 。これは他宗派には一切見られない、お東の大きな伝統的特徴です

  • 供笥:お東の供笥は、お西の六角形に対して、少し面数の多い「八角形」のデザインのものを使用します

  • 吊灯籠:お仏壇の中を照らす灯籠の脚部分が、まっすぐで角張った「丁足(ちょうあし)」のものを用います

お東のお仏壇における段階別の具体的な配置手順

お東での伝統的なお祀り配置は、吊り下げる位置や御本尊の直前の小物の組み合わせ方が、お西よりも多層的で細やかです

  1. 最上段(須弥壇)

    • 中央に御本尊(阿弥陀如来)をお祀りします

    • 左右の脇侍として、向かって右に「十字名号」、左に「九字名号」の掛け軸を飾ります

    • 天井からの灯籠の配置が独特で、お東では「金灯籠」を御本尊と左右の脇侍の「間」にそれぞれ一対吊り下げます 。さらに、脇侍の「外側」にそれぞれ吊灯籠(丁足)と瓔珞を飾ります 。法名軸を使用する場合は、この左右の両壁面の、脇侍よりもさらに手前側に正面に向けて掛けます

  2. 御本尊の直前(宮殿の足元)

    • 中央に小さな「火舎香炉(かしゃこうろ)」を置き、その両脇を一対の「華瓶(水を満たし、樒を挿したもの)」と一対の「仏飯器」で挟み込むように並べます 。お東では仏飯器の台座として「金色」の磨き抜かれた金属製のものを使用します 。また、華瓶はお供え用の水入れとしての役割を担います

  3. 中段および前卓(まえじょく)

    • 三角打敷を敷き、その上部に「前卓(飾り台)」を置きます

    • この前卓の上に、三具足(中央に土香炉である牡丹透香炉、右に鶴亀燭台、左に花立)を美しく並べます 。五具足で飾るスペースがある場合は、香炉を中心に置き、その左右に一対の鶴亀燭台、さらに外側に一対の花立を置きます

    • この前卓の左右の空いたスペースに、八角形の「供笥」を一対配置し、法要の際などにお餅やお菓子をお供えします

  4. 最下段および手前部分

    • 向かって右側に「過去帳」を載せた見台を置きます

    • 仏壇の手前には経机を置き、その上にお経本や「おりん(お布団を敷かずに、おりん台の上に直接置くお東仕様)」、お線香を寝かせて供えるための寝かせ線香用土香炉、線香差しを配置します

現代のモダン仏壇における浄土真宗の飾り方の簡略化

アパートやマンション、リビング空間に合わせるために「モダン仏壇(家具調仏壇)」を選択した場合、内部のスペースが非常にコンパクトであるため、伝統的な「お西・お東」の多くの仏具をすべて置くのは物理的に困難になります

そのため、モダン仏壇においては、現代風にアレンジされた必要最低限の仏具を選びつつ、浄土真宗の最も本質的な教えに沿った形で簡略化することが定着しています

必要最低限の仏具で構成する日常的なお祀り方法

モダン仏壇への配置は、一般的に以下のような3段の棚構成に合わせてシンプルに構築するのがベストです

  • 上段(1段目)

    • 中央に最も大切な御本尊(阿弥陀如来)を安置します 。スペースがあれば、左右に脇侍(お西:親鸞聖人・蓮如上人、お東:十字名号・九字名号)を小さめのサイズで飾ります

    • 御本尊の足元に、炊きたてのご飯をお供えする「仏飯器」を置きます 。また、可能であれば浄土真宗専用の水入れである「華瓶」を小さめの一対で配置し、樒を挿してお供えします

  • 2段目

    • ご先祖様の法名が記された「過去帳」を見台に載せて、引き出しやめくりがしやすい位置(通常は中央か少し右側)に置きます

  • 下段(3段目・手前の引き出しスペースなど)

    • 日常のお参りのための三具足セット、すなわち「花立(お花をお供えする花瓶)」「火立(ローソク立て)」「前香炉(線香をお供えする香炉)」の3点、あるいは線香差しをプラスしたモダンな5〜6点仏具セットを配置します

    • 右側にお参りの合図としての「おりん」を使いやすいように配置します

住環境に配慮した配置の工夫と注意点

モダン仏壇において仏具を揃える際、「モダン仏具セット」として市販されているもの(お茶・お水をお供えする『茶湯器』や、故人の魂が宿るとされる『位牌』が含まれている一般的な5点〜6点セット)を購入することがよくあります

しかし、浄土真宗においては、繰り返しになりますが「位牌は原則として作らない」「お茶や水を仏壇に直接お供えする茶湯器は不要である」という独自の教義があります 。したがって、セットの中に茶湯器が含まれている場合は使用せず、お水は華瓶を使って供える(またはモダン仏壇では省略する)といった調整を行います 。また、近年では故人の生前のスナップ写真を飾りたいというご要望も多くあります 。お仏壇の教義的なスペースの内部に写真を飾ることは好ましくないとされるため、写真を飾りたい場合は仏壇の内部に入れず、仏壇の手前の経机や下台の余白部分、リビングの棚の上に個別のメモリアルスペースを設けて飾ることが推奨されます

浄土真宗における日常のお参りの作法とお供えの心得

お供え物やお参りの作法には、浄土真宗の独自の思想が色濃く反映されています。他宗派と同じ感覚で行うと、作法が大きく異なる場合があるため、以下の点に留意する必要があります。

お茶や水を仏壇に直接お供えしない理由と華瓶の役割

他宗派を信仰される方が最も驚くのが、「浄土真宗では、お仏壇にコップや湯呑みでお茶や水を一切お供えしない」という点です 。他宗派においてお水をお供えするのは、亡くなった方が喉を渇かさないように、という「現世的な配慮(飢えからの救済)」が根底にあります

しかし、浄土真宗では、亡くなった方は阿弥陀如来の計り知れない救いによって、即座に「極楽浄土(安養浄土)」へと往生を遂げ、仏になられています 。極楽浄土には、その世界をさらさらと流れ、誰のどんな渇きも瞬時に癒し、無上の喜びを与える清らかな水である「八功徳水(はっくどくすい)」が無限に満ちあふれています 。そのため、仏様になられた故人に「お水を飲んでください」と現世の不浄な水を捧げることは、浄土の教えそのものを否定することになり、教義的に不要であると解釈されます

ただし、仏壇の中に「華瓶」という特別な花瓶のような形状をした仏具を飾り、そこに水を満たして樒を挿してお祀りすることは行われます 。これは「水を飲んでいただくため」ではなく、水を樒の青葉によって極限まで「清められた香水(こうすい)」へと昇華させ、その清らかな香りを阿弥陀如来に対してお供えするという「香りの供養」を目的としているためです 。お西もお東もこの華瓶を使用したお祀りは推奨されていますが、モダン仏壇などの事情で華瓶を置くことができない場合は、お茶や水のお供えそのものを完全に省略してしまって構いません

宗派を象徴するご飯(仏飯)の盛り方の違いと「盛糟」の使用

毎朝、私たちが美味しくご飯をいただけることに感謝を込めて、炊きたての一番最初をお供えする「仏飯(ぶっぱん、またはおぶっぱん)」ですが、ここにもお西とお東の伝統的な形状の違いが表現されます

  • 本願寺派(お西):極楽浄土に美しく咲き誇るハスの花の「蕾(つぼみ)」を表現します 。よそう際は、上部がなだらかに尖った山のような、ふっくらとした形に盛り付けます 。お給仕のテクニックとして、ご飯を盛り付ける前に仏飯器の金属の器の内側を少し水で濡らしておくと、お参りが終わってお下がりを片付ける際に、ご飯が器にこびりつかず楽に回収できるようになります

  • 真宗大谷派(お東):ハスの花の「実(み)」を表現します 。よそう形は、なだらかな山型ではなく、まっすぐに切り立った「きれいな円柱形(上部が完全に平ら)」に仕上げます 。しゃもじだけを使って手作業でこの均一な円柱形を作るのは極めて困難なため、お東の家庭では一般的に「盛糟(もっそう)」という専用の型抜き仏具を使用します 。この型にご飯をしっかりと詰め、お仏飯器の上にポンと押し出すことで、伝統の美しい円柱形を誰でも簡単に再現することができます

どちらの宗派であっても、お供えしたお仏飯は、お参りが終わった後にお下がりとして家族全員で美味しくいただくのが最高の供養となります 。仏様の智慧の恵みを身体に取り入れることで、今日の一日を無事に過ごせることへの感謝を実感することができるからです

線香を立てずに寝かせる作法と、ろうそく(白・赤)の使い分け

お線香をお供えする行為は、私たちの心身の汚れを清めると同時に、仏様の智慧の香りが部屋いっぱいに均一に広がる様子を現世で感じ取るための重要な儀式です

浄土真宗において最も特徴的なのが、お線香を決して「立てて供えない」という点です 。他宗派では線香を立てて煙を真っ直ぐに上らせますが、浄土真宗(お西・お東共通)では、香炉の直径の大きさに合わせ線香を適当な長さにぽきぽきと折り、火が付いた側が必ず「向かって左側」に来るように、灰の上に静かに寝かせて置きます。この寝かせるお供えの仕方は、浄土真宗の伝統的な礼拝作法として確立されており、お参りをする際には欠かせないマナーとなっています

また、お仏壇に灯すろうそくにも、特別な役割と使い分けがあります 。和ろうそくを主に使用し、色は「白」と「赤(朱)」の2種類を使い分けます

  • 白ろうそくをお供えする場面:日常の朝晩の一般的なお参り、毎月の「月命日(つきめいにち)」、および一周忌や三回忌くらいまでの比較的、まだ悲しみや慎みの気持ちが色濃く残る年忌法要の際に使用します

  • 赤(朱)ろうそくをお供えする場面:七回忌以降の大きな年忌法要の時や、お盆(盂蘭盆会)、春・秋のお彼岸、正月の初参り、そして親鸞聖人の最も大切で盛大な命日法要である「報恩講(ほうおんこう)」などの際に用います 。浄土真宗において、これらは悲しみの行事ではなく、「故人が無事に極楽浄土へ往生し、仏になって自分たちを見守ってくださっていること、そして阿弥陀如来に出会えた喜びを感謝・お祝いする場」と解釈されるため、華やかで慶事の意味を持つ朱色のろうそくを灯して、お仏壇を華麗に彩るのです

日常のお参りでは「おりん」を鳴らさない独自の考え方

他宗派の仏壇にお参りをする際、まず「チーン」とおりん(鐘)を叩いてから合掌し、お経本や念仏を唱え始めるのが一般的な動作です 。しかし、この作法も浄土真宗の日常のお参りにおいては大きく異なります

浄土真宗では、普段の礼拝(朝夕に仏壇の前に座って、手を合わせるだけのお参り)の際には、決してお点前としておりんを鳴らしてはいけません

おりんは本来、お参りに来たことを仏様に知らせて呼び出すための合図ではなく、住職やお参りする人が「お経本を広げて本格的に読経(どきょう)を始める合図」および「終わる合図」を鳴らすための、合図専用の楽器だからです 。阿弥陀如来は、門徒がおりんを鳴らさずとも、いつでも、どこであっても、私たちが仏壇の前に座った瞬間にそのすべてを見て、優しく抱き込んでくださっています 。したがって、日々の挨拶代わりの礼拝の際は、おりんは静かに置いたままにして、ただろうそくに点火し、線香を寝かせて静かに合掌し、口から自然に「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えるのが正しい作法です

忌中(喪中)でも仏壇の扉を開けたままにする教えの背景

家族の中に不幸が生じてから四十九日までの間、他宗派では「忌中(きちゅう)」として、仏壇の扉を閉ざしたりする風習があります

しかし、浄土真宗では、ご家族が亡くなられた直後の忌中であっても、仏壇の扉は毎日普段通りに大きく開けておきます

浄土真宗において、人間の死は決して「穢れ(けがれ)」ではありません 。お亡くなりになったご先祖様や大切なご家族は、息を引き取ったその瞬間に、阿弥陀如来の果てしない慈悲と大いなる誓願によって極楽浄土へと迎えられ、完璧な「仏(仏様)」となられています 。それゆえ、残された家族が「穢れを避けるために仏壇を閉める」という考え方は教義的に矛盾します 。むしろ、愛する家族を亡くして深い哀しみの中にいる遺族だからこそ、毎日仏壇の扉を開け、阿弥陀如来のお姿やお念仏を通じて「私たちはいつでも救われ、極楽の地でいつか必ず再会できる」という大いなる智慧と温かい慈悲に気づかせていただき、生きる力を回復するための重要な場としてお仏壇を開いておくのです

仏壇の購入・買い替えに際して知っておくべき法要と手続き

自宅に初めて新しい仏壇や御本尊をお迎えする際、また古くなった仏壇を新しいものへ買い替える節目には、いくつかの神聖な法要と、適切なお祀り位置の選定が必要となります

新しい御本尊をお迎えする「入仏式」の意味

他宗派では、新しくお迎えした仏像やお位牌に対して、物から生きた魂を宿らせるための「魂入れ(たましいいれ)」や「開眼供養(かいげんくよよう)」を寺院に依頼して行います。しかし、浄土真宗では「すでに阿弥陀如来は、十方のすべての衆生を常に救い尽くす生きた光の仏様そのものである」という考え方があるため、魂を込め直すという儀式は行いません

代わりに、「入仏式(にゅうぶつしき)」(または入仏慶讃法要)と呼ばれるお祝いの法要を、ご所属のお寺の住職にお越しいただいて執り行います 。これは、「私たちの家の中に、いつでも手を合わせられる尊い阿弥陀如来の御絵像や御仏像をお迎えすることができた」という大きなご縁とお祝いを喜び、ご法話をいただくための法要です 。買い替えに伴う古い仏壇の処分の際には、御本尊を一時的に動かすための「遷座法要(せんざほうよう)」をお寺にお願いし、古いお仏壇への役目を終える節目とします。

仏壇の設置方角(東西配置)の基本と実際の間取り調整

お仏壇を家の中に安置する際、多くの方が設置する向きに頭を悩ませます 。浄土真宗における伝統的な考え方としては、仏壇の正面が「東」を向くように、つまり仏壇を部屋の「西側」を背にして東向きに設置する「西方浄土説(さいほうじょうどせつ)」が最も一般的です 。これによって、お仏壇の前に座って東から西に向かって手を合わせる時、その延長線上のはるか西の彼方にあるとされる「極楽浄土」をダイレクトに礼拝することができるという物理的な意味を持たせています

しかし、現代の多様な住宅事情やマンションの間取りにおいては、この東西の方角に厳格に縛られすぎる必要はありません 。直射日光が直接当たって金箔や漆が傷んでしまうような場所、また冷暖房の風が直接当たって木材が反ってしまうような湿気の多い場所などは避けるべきです 。それよりも、「家族全員がいつでも自然に集まりやすく、毎日無理なく手を合わせることができるリビングや居間の中心部分」であり、風通しがよく清潔な場所を最優先に選ぶ方が、仏様にとっても残されたご家族にとっても遥かに喜ばしく有意義な決定となります

まとめ

浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)は、どちらも親鸞聖人の「南無阿弥陀仏」の教えを固く信じ、誰もが極楽浄土へ生まれ変わって仏になることができるという心温まる仏教世界観を基盤にしています 。その深い教理があるからこそ、お仏壇の中に位牌を置かない、お水やお茶を直接供えない、日常のお参りではおりんを鳴らさないといった、他宗派には見られない合理的で独自の礼拝作法が長い歴史の中で培われてきました

金仏壇に刻まれた宮殿の屋根の違いや、お仏飯の蕾・実の盛り方の違いなど、お西とお東の間に存在する様々な形状の違いは、それぞれの歴史と伝統が守り抜いてきた証です 。これらの詳細を知ることで、私たちが毎日仏壇の前に座って手を合わせる行為は、より深い感謝と学びに満ちた時間へと昇華されます

かんたんクーポン発行

全国の仏壇店を探す
ページトップへ