仏壇の置き方

実は仏壇の向きは宗教によって違いがあり、その理由には歴史上の意味が込められています。ここでは宗教による仏壇の向きの違いやその背景、置き場所に関する注意点などについて説明していきます。
仏壇を置く際のポイント
まずは基本的な知識として、覚えておくと便利なポイントを紹介します。
お参りしやすい場所に置く
ただテレビやステレオなど、音がするものの上に置くことは避けたほうがよいでしょう。
また汚れがつきやすい台所のそばや、不浄とされているトイレ、お風呂や洗面所の近くも避けるようにします。
落ち着いて礼拝でき、毎日お参りができる場所が最適なので、お家の中でそういった場所を探してみてください。
また、家族が集まりやすいリビングに置くという家庭も数多く見られます。
仏壇の高さに注意
座って礼拝をする場合は、本尊が自分の目線の高さより少し上になるように、立って礼拝をする場合は、本尊が自分の胸の高さより少し上になるように安置します。
仏壇の向き
仏壇の向きに込められた理由がわかると、仏壇に向かって手を合わせるときに、より気持ちを込めることができるかもしれません。
東向き(東面西座説)
東は太陽の昇る日の出の方角で、立身出世の象徴であることから、インドでは主人は東向きに座るという習慣があり、それが日本にも伝わってできたといわれています。
また極楽浄土はまたの名を西方浄土ともいい、西にあるとされています。
そのため礼拝をする際は西を向いてお祈りをすることになるため、対面する仏壇は自然と東向きになります。
南向き(南面北座説)
中国では高貴な人は南を向いて座る習慣があり、対面する家来は北向きに座ることになります。この習わしが古代中国から日本に伝わってきて、現在の「南面北座説」になったという説です。
敬うべき人、つまりは仏様やご先祖様の魂を南向きに座らせる、という考え方です。
本山中心説
自分の信仰している宗教の総本山を向いて拝む、という考えが根底にあり、礼拝をする際に、手を合わせた先の延長線上に総本山がくるように仏壇を置きます。
従って総本山が東にある場合は西向きに、北にある場合は南向きに仏壇を置きます。
春夏秋冬説
お釈迦様が説いたとされている宇宙の真理・法則・道理がもとになった考え方で、どの方角にも意味があるため、方角にとらわれる必要はないという説です。
この考え方は、「すべての法則は理(ことわり)をもっている」という思想から生まれました。
方角の意味としては、東は日の出の方角で万物千草の芽生える春、西は収穫の秋、南は太陽旺盛な結実の夏、北はそのすべてを納める冬とされています。
宗派ごとの仏壇の向き
従って仏壇を置く方角には基本的に吉凶はありませんが、一般的には北向きは避ける傾向があるようです。ここからは各宗派で支持されている仏壇の向きについて説明します。
天台宗・浄土宗・浄土真宗
この3つの宗派はすべて、本尊として「阿弥陀如来」を祀っています。
阿弥陀如来は西方浄土、つまり西にいるとされていて、礼拝は西の方角を向いて行われています。
従って仏壇は西に背を向けるかたちで、東向きに置くほうが良いとされています。
真言宗
拝む方向の延長線上に総本山がくるようにするので、総本山の方を向いたときに、仏壇が対面するようなかたちで置きます。
曹洞宗・臨済宗
これは前で述べた中国の慣習とは別に、お釈迦様が説法を説く際、南向きに座っていたという逸話がもとになったとされています。
日蓮宗
どの向きでもいいとなると迷ってしまう、やはり方角は気にかかる、という方もいると思います。
そういった場合は祈祷で方角を占ってもらうことも可能なので、より良い方角や置く位置を見極める際に、相談してみることもひとつの方法でしょう。
置き場所に関する注意点
また避けたほうがよい場所や配置もあるので、覚えておくとよいでしょう。
日光・湿気などの環境に注意
そういった環境は仏壇の劣化を速める原因になってしまうので、できるだけ直射日光の当たらない、風通しの良い場所を選ぶ必要があります。
太陽は東から昇るので、東向きに窓がついている部屋や、西日が直接当たってしまう位置は避けたほうがよいでしょう。
直射日光については本山中心説の置き方に特に注意が必要で、総本山が西にあるからといって東に仏壇を置くと、場合によっては直射日光が当たる可能性があります。
そのほか、エアコンの風が直接当たる場所や、人の足がよく踏み込む廊下、薄暗い部屋などは避けることをおすすめします。
神棚との向かい合わせはダメ
日本には神道と仏教を分けることなく信仰する、神仏習合の思想があるため、神棚と仏壇を同じ部屋に置くこと自体に問題はありません。
しかしそれぞれの配置には注意が必要で、神棚と仏壇が向かい合わせになる配置は「対立祀り」といって、よくないとされています。
神棚と仏壇が向かい合っていた場合、どちらか一方に手を合わせるともう一方にはお尻を向けることになってしまい、失礼にあたるというわけです。
神様も仏様も大切な存在なので、どちらにも失礼のないように配置することが重要です。
神棚と仏壇の配置
・上下の配置にする場合はお互いの中心をずらし、完全な上下は避ける
・並べて置く場合神棚は部屋の中心よりに、仏壇は神棚に向かって右手側に置くとよい
・どうしても向かい合う場合は、真向かいにならないように少しずらす
・神棚と仏壇では神棚が優位なので、どの場合もまず神棚に手を合わせる
神仏習合の思想があるとはいえ、どちらにお参りしているのかわからないような配置は避けることが望ましいです。
以上の点に気を付けながら、最適な配置を考えてみてください。
床の間との向かい合わせはダメ
その床の間に向かい合うように仏壇を置くとすると、自然と仏壇の位置は下座になります。
敬うべき本尊や、ご先祖の魂が祀られている仏壇を下座に置くことは、失礼にあたるので避けたほうが望ましいといわれています。
反対に仏壇を床の間に置くことは、特に問題がないとされているので、仏壇を置く場所の選択肢のひとつとして検討してもよいかもしれません。
お供え物も正しい向きで
お盆やお彼岸、そのほかの法要などでお供え物を供える際、掛け紙や包み紙に名前や文字が書かれていることがあります。
名前や文字が書かれていた場合、それが仏壇ではなく自分たちのほうを向くように置くのが正しい置き方だとされています。
供物は下されたもの
しかしお供え物は「仏様に差し上げるもの」ではなく、「仏様から下されたもの」として扱われるので、受け取り主は私たちということになります。
そのため、受け取り側である私たちのほうに文字を向けることが、本来の供え方だといわれています。
まとめ
仏壇の向く方角、お供え物の置き方にも、仏様やご先祖様に対する敬意や、亡くなった方を尊ぶ想いが込められています。
ご家庭に新しく仏壇を安置する際には、
・窓の位置や風通しなどの環境はどうか
・信仰する宗派の仏壇の向きはどうか
・神棚や床の間などの位置関係はどうか
などを確認して、置き場所を考えてみてください。
仏壇は仏様やご先祖様、故人の魂をお祀りする大切な存在です。ぜひ落ち着いて礼拝でき、毎日お参りしやすいような環境を選ぶ参考にしてみてください。

