業界のトップにお話を伺い、明日の事業につながるヒントを探す「TOP Point of View 供養業界トップインタビュー」。
第40回は株式会社永田屋 代表取締役社長 永田浩三氏。明治34年に創業し、今年で74期を迎える株式会社永田屋。近年、仏壇・墓石事業だけでなく、フランチャイズで葬儀事業を展開した。
長い歴史をもちながら、伝承と前進を続けている。現代におけるお仏壇のあり方や事業展開について話を伺った。
「手を合わせることは感謝の気持ちを育むこと」大切な習慣や文化を伝承するために前進し続ける
永田氏
永田浩三(ながた・こうぞう)氏 プロフィール
1965 年 9 月生まれ
2005 年 代表取締役社長(三河地区COO)就任
2006 年 メモリア豊田店 オープン
2009 年 仏壇・仏具・雑貨の通販サービス開始
2011 年 春日井店 オープン
2011 年 墓石の なむなむや オープン
2013 年 北名古屋店 オープン
2015 年 本社所在地を「岡崎市上六名 3 丁目 13 番地 12」へ移転
2017 年 イオンモール名古屋茶屋店 オープン
2021 年 イオン守山店をオープン
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小林
1974年生まれ。
関西学院大学卒。
デューク大学経営大学院経営学修士(MBA)。
2000年に楽天に入社。楽天市場初期の主要メンバーとして複数の事業部長を歴任。2007年からは楽天の国際化を推進し、国際戦略部長としてアジア・欧米での事業開発を担当。その後、米国に計8年間駐在し、カリフォルニアでは買収先企業の社長に就任。国内外で数々の企業のV字回復実績を持つ。
2017年6月、東証一部上場企業の鎌倉新書に入社。2018年4月より同社代表取締役社長COOに就任。
永田やの歴史
小林
まずは永田や創業の歴史とこだわりについて教えてください。
永田氏
明治34年に創業し、初代は曽祖父で仏師をしていました。
二代目にあたる祖父が昭和24年に株式会社永田屋として会社を立ち上げ、今年で74期を迎えます。父の代で14店舗まで展開しました。
父は永田やの心を理念として掲げました。
「礼の心を大切にする・耐えることを喜びとする・自分よりも他人を大切に・前進を合言葉とする・父さん母さんに感謝する」という5つの心です。
先代の直筆で書かれた額を見ながら毎朝朝礼で唱和しています。
近年の変化をどのように捉えていますか。
お仏壇は住宅事情とリンクしている部分があります。
ここ数年は畳の部屋がない住宅が増えていることで仏間が減少してきました。
私たちの取り扱う三河仏壇は三尺以上の仏間が必要になります。
しかし、最近はフローリングの部屋に馴染みやすい形のお仏壇が求められるため、家具調仏壇やコンパクトなお仏壇が主流になりました。
お客様のニーズに合わせたものをご提案できるように、店舗のレイアウトを変更し、お客様が見やすく商談しやすいレイアウトを心がけています。
業界内では家族経営の会社は多いですが、永田やさんはご兄弟で経営されていますね。
そのあたりはいかがでしょうか。
長男が会長、私が社長、三男が副社長を勤めています。
全員が経営者のため、もちろん意見がぶつかることはあります。
しかし、お互いに性格が異なるので、それぞれの意見をすり合わせ、アドバイスをしあいながら方針決定しています。毎月一度、経営会議と部署長会議を行っています。
最近は息子たちも経営に関わり始めました。
仏壇の役割
三河仏壇の普及にご尽力されていますが、改めて三河仏壇について聞かせてください。
私は三河仏壇振興協同組合の理事長を勤めています。
三河仏壇は経済産業省から伝統的工芸品に指定されている、昔ながらの技術と技法を伝承しているお仏壇です。
残念ながら年々、作成本数は減少しています。
職人さんの高齢化が進み、組合員も減っているため、数年後には三河地方でお仏壇が作れなくなってしまうかもしれません。
それでも、求めてくださる方はみえるので、私たちは伝承し続けなければならないと思っています。
新商品を提案し、少しでも職人さんの仕事が増えるようにと考えています。
いまはお仏壇をもたない家庭も増えてきていますが、永田社長はお仏壇の役割について、どのようにお考えですか。
私が子どもの頃は昭和40年代で、三世代が同居していることが多かった時代です。
私も祖母と一緒に暮らしていたので、祖母がお仏壇の前で毎日お参りする姿を見て育ちました。
一緒におりんを叩いたり、線香を焚いたり、手を合わせることが生活の一部として必ずありました。
お仏壇は手を合わせることで感謝の意を伝えることになるため、日々の生活のなかで心を育む教材になると思います。
昨今、家族に纏わる凶悪事件が増加していますが、もしもその家庭にお仏壇があったら、なにか違ったのではないかと考えてしまいます。
核家族化により、手を合わせる習慣を育めない時代になりました。心を育む教材がなくなると、日々の生活のなかで自然に人の命の大切さを伝えることが難しくなります。
お仏壇でお参りをする文化は日本人の心を育むうえで、とても大事な役割を担っていたのではないかと思います。
私自身も幼い頃、祖母が手を合わせる姿見て育ったので、とても共感できます。
手を合わせることに関しては、食事の場でも同じことが言えます。
家庭で「いただきます」や「ごちそうさま」の時に手を合わせて食物に感謝をする習慣はまだあると思いますが、ファーストフード店やファミリーレストランなどでもそれを行っている家族は少ないです。
環境的な理由もありますが、子どもたちに伝えるべき大切な教えを、伝承できていないから、子どもたちに感謝の意が芽生えないのだと思います。
お仏壇も食事の場も、手を合わせることは大切にしていきたいですね。
事業展開
お仏壇だけでなく、葬儀にもサービスを展開されましたが、そのあたりについて教えてください。
サービス業の葬儀は着手しないと考えてきたのですが、仏壇も墓石もマーケットサイズが縮小し、成約単価が低下しているため、同じ売り上げをつくることが難しくなりました。
成約本数を増やすためには、店舗を増やす必要がありますが、同じマーケットサイズの中で売上を増加させるのは難しいと理解していました。
そこで、葬儀をはじめることで、違うマーケットで売上を拡大することを決めました。
葬儀と仏壇、墓石をワンストップで提供できることはお客様のためにもなると考え、事業を展開しました。
しかし、弊社は葬儀のノウハウがないので、フランチャイズ展開をされている名古屋の株式会社ティアさんにご相談をして、実現に至りました。
これだけの歴史がありながら柔軟性をもって経営していくというのは大変なことだったと思います。
畑が違うので上手くいかないと思い込んでいましたが、実際に勉強させていただき、物販業で培った実績をサービス業でも活かせると実感しました。
ただし、会館を建てたからといってすぐにご依頼が入るとは思っていなかったので、いばらの道かもしれないと覚悟していました。
しかし、株式会社ティアさんのブランド力のおかげで、初月から多くのご依頼をいただくことができました。
今後も葬儀の展開は続けて行かれますか
そうですね。良い場所があれば今後も増やしていきたいです。
これからはワンストップでサービスを展開できるので、物販にも繋げていけますし、いい流れができると思います。
地域によっては飽和状態になっている場所もあるので、マーケティングのアドバイスをいただきながら進めていきたいです。
今後の展望
最後に、今後の展望を教えてください。
コロナが終息していないので、正直先が見えない状況ではありますが、ウィズコロナの時代を見据えた地盤固めをしていきたいと思っています。
コロナの時代に順応できる会社づくりをするために、労務管理ソフトを導入し、パソコンや携帯から誰でも簡単に、業務改善の提案ができるようにしました。
いまは、現場の言葉を大切にするボトムアップの社風づくりを目指しているところです。
スタッフのためでも、地域のためでも、どんなことでもいいので意見を聞いていきたいと思っています。
顧客満足を求めるなら、まずは従業員満足が大切です。
その姿勢を見せながら実現していきたいです。
――永田社長、ありがとうございました。
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